

美容業界において、オンライン上での顧客体験は、購買行動を左右する重要な要素となっています。とりわけ色や質感が重要な化粧品では、「実際に試せない不安」をいかに解消し、自分に合った選択ができるかが大きな課題です。
こうした中、世界的コスメブランドであるM・A・C(Make-up Art Cosmetics)は、パーフェクト社 のAI・AR技術を導入。オンラインと実店舗の双方で、誰もが自分らしくメイクを楽しめる体験づくりに取り組んできました。
本記事では、デジタル施策をリードした担当者へのインタビューを通じて、導入の背景や狙い、得られた成果、そしてM·A·Cが大切にするブランド哲学との関係性に迫ります。
――まず、ブランドについて教えてください。
M·A·C(Make-up Art Cosmetics)は、1984年にカナダ・トロントで誕生した、プロフェッショナル向け化粧品ブランドです。業界関係者やメイクアップアーティストの口コミをきっかけに評価を高め、現在はThe Estée Lauder Companiesの一員として、世界130カ国以上で製品を展開しています。毎年多数のコレクションを発表し、消費者とプロ双方のニーズに応え続けている点がM·A·Cの特徴です。
さらにM·A·Cは、創業当初から社会的責任を大切にしてきたブランドでもあります。HIVやAIDS支援をはじめ、女性やLGBTQIA+コミュニティの健康や平等な権利の促進に取り組み、メイクアップを通じて社会にポジティブな影響を与えることを目指しています。
――ブランドとして大切にしている価値観は何ですか?
M·A·Cが最も大切にしているのは、「すべての人が自分らしい美しさを自由に表現できること」です。年齢や人種、性別にとらわれず、一人ひとりの個性や自己表現を尊重するという考え方は、創業以来変わることなくブランドの核にあります。
その価値観は、製品づくりだけでなく、顧客との向き合い方にも反映されています。私たちは、単に商品を提供するのではなく、ブランドと出会う体験そのものがポジティブであることを重視しています。
ECやデジタル接点が主流となった今も、M·A·Cらしい自由さや楽しさを、オンライン・オフラインを問わず一貫して届けていくことを大切にしています。

――デジタル施策を強化しようと思われた背景を教えてください。
M·A·Cでは、世界中の多様なお客様に向けて製品を提供しているからこそ、デジタル上でも「すべての肌色や顔立ちに対応できる体験」が必要だと考えていました。ブランドの理念である「すべての年齢、すべての人種、すべての性別の人々にサービスを提供する」という考え方は、製品だけでなく、オンライン体験にも同様に反映されるべきだと感じていたからです。
一方で、オンラインでの化粧品購入では、色味や仕上がりが分かりづらく、不安を感じるお客様が多いという課題がありました。特にM·A·Cはプロのメイクアップアーティストとも深く関わってきたブランドであるため、高い精度と信頼性を備えたデジタル体験が求められていました。 こうした背景から、AIとARを活用し、ユーザーが自分自身の顔で製品を試せる環境を整えることで、オンラインでも安心して選べる体験を提供したいと考え、デジタル施策の強化に取り組むことになりました。
――弊社の技術を採用したポイントは?
数あるデジタルソリューションの中で、貴社の技術を採用した最大の理由は、ARメイクの精度と表現力の高さでした。M·A·Cはプロフェッショナル向けブランドとして、色味の再現性や仕上がりの質感に一切妥協できません。その点で、実際のメイクアップに近いリアルな表現が可能であることは、大きな決め手となりました。
また、肌色や顔立ちの多様性に対応できる点も重要でした。世界中のユーザーが利用することを前提としたとき、幅広い人種・肌トーンに対して自然なバーチャル試着ができることは欠かせません。貴社のAI・AR技術は、その点においても高い信頼性があると感じました。
さらに、既存のデジタルチャネルとの親和性や、スムーズな導入が可能である点も評価しました。ブランドの世界観を損なうことなく、オンライン上でM·A·Cらしい体験を提供できると考え、採用を決定しました。

――どのような機能を導入されていますか?
導入している代表的な機能は次の通りです。
スマホやPCのカメラを使って、リップやアイシャドウなどをリアルタイムに試せます。ユーザーは自分の顔で色味や仕上がりを立体的に確認できます。
肌のトーンや特徴を解析し、最適なシェードを提案します。色選びの負担を軽減し、納得できる買い物につながります。 この2つの機能を中心に、ユーザーが迷わずスムーズに選べる体験設計を重視しています。

――店頭でもバーチャル体験は可能なのでしょうか?
もちろんです。私たちの店舗は今やデジタルエンゲージメントを中心に構築されていると言っても過言ではありません。
具体的には、店内にバーチャル試着専用のiPadを設置し、お客様が自由に、あるいはメイクアップアーティストと一緒に最新のAR技術を体験できる環境を整えています。
ニューヨークや上海に開設した「M・A・C イノベーションラボ」では、このバーチャル試着が店舗体験のまさに中心的存在となっています。

――導入後に実感した成果を教えてください。
導入後の成果は多方面に及びますが、端的に言えば「顧客体験の向上」と「ビジネス成果の拡大」を同時に実現できたことが最大のメリットです。特に、大きく3つの点で手応えを感じています。
まず、数値面で明確な変化が現れました。ファンデーション向けの「バーチャルシェードファインダー」を導入したクイーンズセンター店では、初月の顧客エンゲージメントが平均と比較して200%増加しました。 バーチャルで“試す楽しさ”が生まれたことで滞在時間が延び、ブランドとの接点がより深まっています。
オンラインで化粧品を購入する際の最大の課題は、「実物とイメージが異なるのではないか」という不安でした。しかし、パーフェクト社のAR技術により、色味だけでなく質感や輝きまでリアルに再現できるようになりました。お客様は自宅にいながら自分の顔で仕上がりを確認できるため、安心して購入できます。
現在、お客様はSNS、Webサイト、そして実店舗など複数の接点を行き来しています。SnapchatやGoogle、店舗のiPadなど、どのチャネルでも同等のバーチャル体験を提供できるようになったことで、シームレスなカスタマージャーニーを実現できました。場所を問わず、一貫したブランド体験を届けられるようになったことは大きな進化です。
――顧客からの反応で印象的な声はありますか?
多くのお客様から、「自宅にいながら本格的に試せるのが楽しい」「新しいシェードに挑戦しやすくなった」といったポジティブな声をいただいています。 特に印象的なのは、これまで選んだことのないカラーをバーチャルで試し、そのまま購入につながるケースが増えていることです。テクノロジーが“挑戦するハードル”を下げ、自己表現の幅を広げるきっかけになっていると感じています。
また、Snapchatやオンライン上で体験した後に店舗へ来店されるなど、デジタル体験がリアルな接点へと自然につながる動きも見られています。ブランドとの関わり方がより自由で、シームレスになったことを実感しています。
――ブランドとして今回の取り組みをどう評価していますか?
今回の取り組みは、単なるデジタル機能の追加ではなく、M·A·Cが大切にしてきた「すべての人が自分らしく表現できる世界観」をデジタル上で体現する重要なステップだったと考えています。 ARやAIはあくまで手段ですが、それによってより多くのお客様が自信を持って色を選び、新しい自分を発見できるようになりました。ブランド体験をオンライン・オフライン問わず一貫して届けられるようになったことは、大きな前進だと評価しています。
――最後に、今後の展望を教えてください。
今後も、よりパーソナライズされた体験の提供を目指していきます。お客様一人ひとりの肌トーンや好みに寄り添いながら、オンラインと実店舗を横断したシームレスな体験を強化していく方針です。 これからもパーフェクト社との協業を通じて、テクノロジーを活用しながらも、M·A·Cらしいクリエイティビティと自己表現の楽しさをさらに広げていきたいと考えています。

パーフェクト株式会社は、日本、アメリカ、ヨーロッパ、台湾、中国、インドに拠点を構えています。 お客様のニーズや予算規模に合わせた柔軟なソリューションを提供しており、現在700以上のコスメ・ファッションブランドとパートナーシップを結び、10万点以上のコスメ商品を60か国以上で展開。
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