大阪市と堺市をホームタウンとするセレッソ大阪は、クラブスローガン「SAKURA SPECTACLE」のもと、サッカーを通じて夢や希望を届けながら、地域とともに歩んでいます。
クラブが大切にしているのは、試合に勝つことに加えて、「スタジアムで過ごす一日が楽しい」と感じてもらえる体験づくりです。
その一環として、2025年6月1日の清水エスパルス戦では「平成レトロDAY」を開催しました。
パーフェクト社の生成AI技術を活用した仕掛けが話題となり、来場者からも好評を得ました。
今回は、株式会社セレッソ大阪 ファンマーケティング部ファンエクスペリエンスグループ グル ープ長の生田様に、本企画の背景やファンの反応、そしてクラブが大切にしている思いについ てお話を伺いました。
セレッソ大阪がイベント企画で重視していることは何でしょうか。
私たちは、試合はもちろん、それ以外の時間もふくめてスタジアムで過ごす一日を楽しんでいただくことを重視しています。
大阪はスポーツやエンタメの選択肢が非常に豊富な街です。その中でセレッソ大阪が選ばれるためには、競技の魅力に加え、大阪らしい「親しみやすさ」や「おもろさ」を打ち出すことが欠かせません。
サッカーを含めたエンターテイメントを提供する企業として、地域文化に根差した楽しさをスタジアム体験に取り入れていきます。
これまでに、お笑い芸人とOB選手のコラボ、ミュージシャンによるオリジナル楽曲、アニメ作品とのコラボ企画といった多彩な取り組みを積み重ねてきております。
地元の方々が、人それぞれ色んなワクワクを抱きながらスタジアムに集まる景色を目指しております。
今回のイベント「平成レトロDAY」はどのように企画されたのですか。
2021年に開催した「昭和レトロDAY」は、大阪の空気感を体現するようなイベントで、じゃりン子チエとのコラボなどもあり、たくさんの方に「大阪らしい」と感じていただける内容でした。
▲来場者に配布したじゃりン子チエコラボステッカー
好評をいただいた一方で、当時はコロナ禍の影響で観客数が5,000人に制限されていました。
「フル動員でスタジアムを埋め尽くすことができたら、もっと多くの方に楽しんでもらえたのに」という思いが残っていました。
その時から「いつか再びレトロイベントをやりたい」という構想は心の中にありました。
ただ、同じ “レトロ” でも次にやるなら「昭和」ではなく「平成」という新しい切り口で企画を組み立てようと考えていました。
平成もすでに振り返る対象になりつつあります。世代ごとに違った受け止め方があるだろう、と。
そして今回の対象試合に選んだのが、清水エスパルス戦です。
清水はJリーグ初期から熱心なファンを中心に支えられてきている名門クラブで、平成初期にサッカーに夢中になった世代からの認知も高いです。
だからこそ、この試合を舞台に「平成レトロDAY」を行うのが最もふさわしいと考えました。
両チームのファンはもちろん、平成の記憶とともに育った世代にもしっかりと届くコンテンツを意識しました。
企画を考えるうえで大事にしたのは「懐かしくて楽しい」と思ってもらうことです。
その世代にとっては青春を思い出すきっかけになり、同時に若い世代にとっては逆に新鮮に映る。
実際、世の中でもレトロブームが続き、“親世代の思い出”が“子世代にとっての新しいカルチャー”として受け入れられる流れが起きていました。
その流れを背景に、今回は年間でも特に力を入れる注力イベントとして「平成レトロDAY」を企画しました。
イベントを通してAIをどのように活用されたのですか。
▲生成AIで作成した選手画像を特大パネルで展開
今回の「平成レトロDAY」では、パーフェクト社の生成AI技術を活用し、選手を平成風の髪型やファッションにアレンジしたビジュアルを制作しました。
AIを用いたことで、単なるコスプレ風の加工ではなく、各選手の特徴を活かしつつ「平成のどこかにいそう」と感じられる、自然で親しみやすい仕上がりになりました。
イベント前にはXやYouTubeを通した展開も印象的でした。
AI画像はまずXで公開され、ファンからの反応も良好で、インプレッションやリツイート数は有名タレントの来場告知と同等の数字を記録しました。
さらに、AI画像に対する選手の反応をまとめた動画をYouTubeで公開したところ、1万回以上の再生を記録。
普段のイベントのプロモーション動画と比べて、倍くらい高い結果となりました。
また、選手たち本人が楽しんでいたことも印象的でした。
自分自身をAIで“平成風”に変身させた姿を見て、「こういう人、本当に平成の時にいたよね」と前向きに楽しんでいる様子は、ファンにも伝わり、ユニークで親しみやすいコンテンツに仕上がったと感じています。
※2025年6月1日時点在籍
数ある選択肢の中で、なぜパーフェクト社のAI技術を選ばれたのですか。
一番の理由は、「平成」という時代をどう表現するかがとても難しかったからです。
平成は30年以上続いた時代で、90年代と2010年代ではまったく文化も違います。
ファッション、音楽、流行した遊びやアニメ──どこを切り取るかによって人が抱く印象は大きく変わってしまう。
その幅の広さに直面して、「普通にイベントをやるだけでは表現しきれないな」と感じていました。
そんな中で目にしたのが、パーフェクト社と楽天イーグルスの取り組みです。
別のチームではありますが、私は過去にプロ野球チームでも働いていた経験があり、野球界の取り組みも常にチェックしています。
そこで見た「AIを活用したレトロ企画」は、実際にファンの間で話題になっていて、「これは新しい切り口になる」と直感しました。
セレッソ大阪でもこの技術を使えば、平成レトロをただ懐かしむだけでなく、体験としてアップデートできるのではないかと。
もう一つ大きかったのは、同社がすでにプロスポーツ業界で実績を持っていたことです。
AIというとまだ未知数に感じる人も多いと思いますが、すでに実際にファンに提供されて成功事例があるというのは、私たちにとって非常に大きく安心出来ます。
Jリーグで初めての試みに挑戦するうえで、単なる新しさだけではなく「実績に裏付けられた安心感」があることはプラスの判断材料となりました。
ファンの反応はいかがでしたか。
今回の試合前から、SNSでは「平成レトロDAYを楽しみにしている」といった期待の声が多く寄せられていました。
当日は平成を感じられるコンテンツが盛りだくさんで、Jリーグチップスの配布やLINDBERGさんによるスペシャルパフォーマンスなども実施し、イベント全体を通じてノスタルジーを演出することを狙いました。
※2025年6月1日時点在籍
生成AI画像に関しては、パネルの前で記念撮影をする来場者が多く、特に家族連れや女性ファンの姿が目立ちました。
▲平成レトロをテーマにした限定グッズ売り場
さらに、平成レトロをテーマにした限定グッズ売り場にも長い行列ができ、イベントをきっかけにスタジアムを回遊する楽しさが生まれていたと思います。
▲生成AI画像はグッズとしても活用された
試合後に実施した来場者の満足度調査では、「満足している」と回答いただいた方の割合が、年間で見ても高い数値を記録しました。
もちろん、その日の試合結果や天候、他のコンテンツなど様々な要因が影響しますので単純比較はできません。
それでも、「イベントが良い来場体験にしっかり寄与している」と胸を張って言える結果になったと思います。
社内の反応はどうでしたか。
「AI生成でここまでできるのか」という驚きの声が多くありました。単なる実験で終わるのではなく、イベントを通じて実際に集客やグッズ収入にきちんと結びついた点は大きな成果として評価されています。
最新技術とレトロという一見相反する要素を掛け合わせてシナジーを生み出せたことは、クラブにとって大きな財産になりましたし、今後の企画にもつながる大事な経験になったと感じています。
最後に、今後の展望について教えてください。
今回の「平成レトロDAY」では、AIを取り入れることで来場者にこれまでにない体験を提供できました。
イベントに対する期待や満足度が高まり、そのことが結果的に集客にも結びついたのはクラブとして大きな成果です。
これからも「スタジアムで過ごす一日が楽しかった」と感じてもらえるような取り組みを継続していきたいと思っています。
今後も新しい技術の活用も視野に入れながら、ファンの皆さまに「行ってよかった」「こんな仕掛けは初めて」と驚きや楽しさを届けられるよう挑戦を続けていきます。
セレッソ大阪はこれからも、多様な企画やイベントを通じてサッカー観戦の魅力を広げ、スタジアムでの時間をより特別で忘れられないものにしていけるよう取り組んでまいります。
生田修也 プロフィール
2021年にセレッソ大阪へ入社し、集客や来場者体験の向上に取り組んでいる。芸人として舞台に立ち、自らライブを企画した経験をはじめ、テレビ局でのスポーツ番組制作や福岡ソフトバンクホークスでの経験を経て、多様なキャリアを活かしながら観戦の魅力を広げるスタジアム体験づくりに携わっている。
パーフェクト株式会社はスポーツ・エンタメ業界向けに、生成AIを活用したファンエンゲージメント・コンテンツ制作サービスを幅広く提供しています。