


「楽しく、手軽に、本当の“似合う”を見つけてほしい」── そんな思いから誕生したのが、株式会社Innovation Studioの『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』です。
「本当の似合うが見つかる」をコンセプトに、フェイスからボディまで全身を分析できる体験型ミラーとして、全国のアパレルショップで導入されています。
本サービスには、パーフェクト社の『AI服試着ツール』がAPI連携されています。
今回は、『+PLUS MIRROR』開発の背景や、実際の店舗での活用方法、AIバーチャル試着が生み出す“+αの体験”について、Innovation Studioのご担当者様にお話を伺いました。

──まず、『+PLUS MIRROR』の開発に至る背景を教えてください。
『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』は、当社(IS)が設立される以前から、親会社であるデイトナ・インターナショナルの事業として開発を進めていたサービスです。
デイトナ・インターナショナルでは、売上拡大の戦略を検討するなかで、オンラインだけでなく店舗のデジタル活用をどのように進めるかが重要なテーマとして議論されていました。
特にOMO(Online Merges with Offline)の観点では、店舗とオンラインをシームレスに行き来できる購買体験をどう実現するかを重視していました。
例えば、来店されたお客様が、オンラインでもスムーズに購入へ進める導線づくり、逆にオンラインで購入されたお客様にも店舗に足を運んでいただける仕組みづくりといった 双方向の購買体験 を実現する方法を検討していました。
──具体的にはどのような施策が検討されていましたか?
まず私たちは、「デジタルを取り入れながら新しい体験を提供する」という方向性を定めました。
次に着目したのが、既存のデジタルサービスの多くが来店されたお客様の手で触れられていないという課題です。
そこで私たちは、店舗で気軽に楽しめてつい触ってみたくなるような体験を提供できないかと考えました。
この発想から生まれたのが、現在の『+PLUS MIRROR』です。
お客様にとって親しみやすく、かつ店舗体験の価値を損なわないよう配慮した仕組みづくりを目指しました。
──なるほど。人員削減を目的としたデジタル化ではなかったのですね。
その通りです。
一般的にデジタル施策というと、「人を減らすための効率化」や「人の代替」といった印象を持たれがちです。
しかし、私たちは当時、"人の価値をさらに活かすデジタル活用" をテーマにしていました。
店頭でのコミュニケーションや接客価値をむしろ高めることを重要視していました。
私たちが目指したのは、スタッフとお客様の会話のきっかけとなったり、ブランドとお客様の間に親しみや信頼が育まれるような "コミュニケーションを支えるデジタル体験" です。
──ミラー型を採用されたのには、どんな理由があったのでしょうか。

デジタル化が進んでも、「鏡」はアパレルショップに欠かせない存在です。
誰もが自然に手に取る日常的なアイテムだからこそ、デジタルとの融合がスムーズに感じられると考えました。
また、モニターを設置するよりも店内を広く見せられるという空間的な利点もあります。
こうした背景を経て誕生したのが、多様な診断コンテンツとレコメンドを通じて"選ぶ楽しさ"を広げる『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』です。

──AI服試着ツール導入の経緯について教えてください。
『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』ではこれまで、パーソナルカラー診断や骨格ボディタイプ診断など、さまざまなパーソナル体験を提供してきました。
常に「お客様にどんな新しい体験を届けられるか」を考える中で、ミラーを使っている以上、やはりバーチャル試着を取り入れるべきだという意見が多くあがったんです。
AIバーチャル試着は既存の取り組みと親和性が高く、自然な形でデジタル体験をさらに広げられると判断したのが導入のきっかけです。
──バーチャル試着を導入するにあたり、特に重視されたポイントは何でしょうか。
最も重視したのは「クオリティ」です。
もちろん価格も検討要素のひとつではありましたが、それ以上に大切だったのは、お客様が試着した際に「実際に着るとこうなるのか」と納得できる自然さでした。
クオリティが低く、「これでは全然イメージできない」と思われてしまうと、かえってブランドイメージの低下につながりかねません。
そのため、何よりもまずクオリティを優先しました。
──弊社のバーチャル試着を採用された理由を教えてください。
コート・ジャケット・パンツ・スカート・ワンピースなど幅広いカテゴリで、素材感や着用感、シルエットといった細部までを検証した結果、パーフェクト社のツールが最も自然で違和感のない仕上がりだったため、導入を決めました。
──ありがとうございます。APIの活用と設計でこだわったポイントはありますか?
設計において最も重視したのは、「実際の試着体験に近い感覚」をいかに再現するかという点です。
そのうえで、バーチャル試着だからこそ可能な“+α”の体験も取り入れることにこだわりました。
たとえば、実際の試着室では色違いを試す場合、試着したいカラーそれぞれを試着室に持ち込んだり、試着室に入ったあと他の色を試着したくなった際はスタッフを呼ぶ必要になる場合もありますが、バーチャル試着なら1つの商品を読み込むだけですべてのカラーを表示することができるので、まとめて試着して比較することができます。
さらに、試着したいアイテムのコーディネートからそのまま試着できる点も魅力です。商品画像だけでなく、スタッフのスタイリング画像からも試せるのはバーチャル試着ならではの体験と言えます。
こうした柔軟でスムーズな体験設計が実現できたのは、パーフェクト社のAPI連携サービスを活用しているからこそ。
ユーザーが直感的に操作でき、幅広い試着体験を提供できることが、技術面での最大のこだわりです。

──店舗ではどのように『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』を活用されているのでしょうか?
スタッフの接客の中で活用することもありますが、お客様ご自身でも自由に体験できるような設計にしています。
背景には、導入店舗である『FREAK'S STORE』の高い入店率があります。
常に多くのお客様で賑わっているため、接客ありきで設計してしまうとスタッフの負荷が大きくなってしまう懸念がありました。
そこで、接客対応とセルフ体験の両方に対応できる形で設計し、お客様が気軽に楽しめるようにしています。
──お客様が自然に触れるよう工夫されているのですね。
はい。これまで他社の取り組みでは、モニターやミラーサイネージを設置しても、お客様がほとんど触らない例を多く見てきました。
そのため『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』では、お客様が"思わず触りたくなる"体験設計を特に重視しています。
具体的には、待機画面の見せ方、操作した瞬間の音の演出、インタラクションのテンポなど、細部のUI/UXまで徹底的にこだわりました。店頭で思わず立ち止まり、自然と試してみたくなる"誘引力"を持たせることを意識しています。
また、設置場所の工夫も非常に重要なポイントです。
これまで複数の店舗で反応を分析し、ミラーの存在感はしっかりと目に入る一方で、利用時にお客様が恥ずかしさを感じにくい距離感・角度・動線を慎重に検討してきました。お客様が気負わず、自然に体験に入りやすくなるような配置を追求しています。
さらに、体験後の満足感にもこだわりがあります。
診断結果をまとめたカルテは、あえてデジタルだけで完結させず、厚紙の"持ち帰りたくなるカード"として手元に残る設計にしています。女性のハンドバッグにもすっと入るサイズにし、店頭での体験がその後も記憶として続くことを意図しています。
──今回新しく追加されたバーチャル試着機能の実際の体験の流れを教えてください。

体験には大きく分けて二つの方法があります。
1つ目は「バーコード読み取り方式」です。実際の商品バーコードを読み込むと、その商品に紐づいたカラーやスタイリングが画面に表示されます。その後、全身を撮影すると、試着した姿が画面に反映されます。
2つ目は「スタイリングから選ぶ方式」です。スタッフの着用画像から、自分と同じ身長のスタッフを選んだり、店舗にいるスタッフのスタイリングから試着アイテムを選べます。スタッフとのコミュニケーションのきっかけづくりとして活用できるように取り入れました。
いずれの方式も1回で最大5点まで同時に試着できるのも特徴です。
──ECサイトとの連携も検討されていますか?
はい。直近では、その場で購入に至らなかったお客様でも、後からECサイトで気軽に購入できる仕組みとしてバーチャル試着の生成結果とあわせて商品情報とECサイトへの導線も設置可能になりました。
これがECサイトでの購入の後押しにつながると考えています。
また、『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』のバーチャル試着をECサイト上で体験できるように現在開発を進めているのでより導入ハードルが下がり、様々な業界のクライアント様に導入いただけるのではないかと思います。

──展示会で『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』をご紹介されていましたね。KPIなど、達成状況はいかがでしたか?
KPIはいくつか設定していましたが、たとえばリード獲得数に関しては、計画の約120%を達成することができました。
現在も多くの引き合いや商談があり、さまざまな企業様と引き続きお話ししている状況です。
今回の展示会では新機能の紹介も行ったため、普段とは異なる環境での成果となりました。
リード獲得という観点では、十分に目標を達成できたと感じています。
──印象に残った反響があれば教えてください。
スポーツ業界の方々にもブースにお越しいただき、「これまで提供してきた体験がマンネリ化してきている」といったご意見をいただきました。そうした中で『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』をご覧になった方々から、「新しい形で活用できるのではないか」といった前向きなアイデアをご提案いただく場面がありました。
実際にお話を進める中で、新たな施策や体験のアイデアが次々と生まれたことが、とても印象に残っています。
たとえば、スタジアム内で試着室がないような環境でも、バーチャル試着を導入すれば新たな体験を提供できます。アパレル以外の業種でも関心を持っていただけたのは非常に意義深く、幅広い分野で活用できることをあらためて認識しました。

──アパレル業界の方の「バーチャル試着」に対する認知度はいかがでしたか?
バーチャル試着自体は多くの方が知っている一方で、「自社でどう導入すればいいのか」「具体的にどんな風に活用できるのか」といったイメージは湧きにくいようで、導入のハードルはまだまだ高いなと実感しました。
また、「バーチャル試着用の機械」と聞くと、設置やメンテナンスが大変そうという印象を持たれる方も少なくありません。
──確かに運用が大変そうに思えますね。
そうですよね。システム面でどうしてもハードルを感じてしまう企業は多いようです。
たとえば、バーチャル試着を単体で導入する場合、「どこに出力するか」「どう再現するか」といった設計を最初に検討しなくてはなりません。
しかし実際には、導入は「大きなスマホ」を設置する感覚に近く、機械の設定を一から行う必要はありません。
アプリをインストールするような感覚で機能を追加でき、システムもバックグラウンドで常に更新されるため、安心して運用できる仕様になっています。
──「大きなスマホ」という例えはわかりやすいですね!
ありがとうございます。当社のサービスでは、そういった設計面に不安がある企業に対して体系的なサポートが可能です。
マーケティング担当者だけでは決めきれない部分もありますが、我々が伴走することで、企画から実装までスムーズに進められます。
「バーチャル試着を取り入れてみたい」と考えるアパレル企業は多いので、積極的に支援していきたいですね。

──今後実現したら嬉しいサービスはありますか?
目黒様:
骨格別のコーディネート提案においては、鎖骨の出方や骨盤の形といった体の細かい特徴まで反映された生成結果があると、より説得力や納得感が高まると感じています。
私たちが保有している体形の特徴データを取り込めるような仕組みを構築できたら嬉しいですね。
また、現在は平面でしか出力できませんが、複数枚の画像を入力して立体的に生成できるようになると、よりリアルな試着体験をお客様にお届けできるのではないかと思います。
中村様:
完全にリアルと同じ試着体験を再現するという意味で、お客様自身で選んだアイテム単品それぞれを組合せてコーディネートを再現できる機能があると、お客様の納得感がさらに高まると感じています。
あとは、サイズ感の再現ですね。難しいところではあると思うのですが、ここが精度高く再現できれば、他社との差別化にも大きく寄与すると考えています。
──最後に、今後の展望について教えてください。
これまでは主に近い業界での活用が中心でしたが、今後はより幅広い業種・企業に『+PLUS MIRROR(プラスミラー)』やバーチャル試着の技術を活用していただけると考えています。
たとえば、先ほどあがったスポーツ業界やエンタメ業界、ブライダル、フィットネスなど、アパレル以外の分野にも技術提供を広げていきたいですね。
現場の状況を把握している私たちだからこそ、「どのように技術を組み合わせれば各社の課題解決につながるか」を提案できる部分があると思います。
業種や業態にとらわれず、技術を活かしてさまざまな企業に価値を提供できるよう、取り組みを進めていきたいと考えています。

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