


化粧品を選ぶ際、「人気の商品だから」「口コミ評価が高いから」という理由だけでなく、「自分の肌に本当に合うのか」を知りたいと考える消費者は少なくありません。 一方で、化粧品メーカーにとっては、薬機法による広告表現の制約などにより製品の品質や機能性を適切に伝えることが難しく、「良い製品を作ってもその良さを十分に伝えられない」という課題があります。
こうした課題に着目し、製品の客観的な評価と一人ひとりの肌状態を掛け合わせ、製品と肌の「相性」を可視化するのが、株式会社meLupe(ミルーペ)のスキンケア評価プラットフォームです。製品一品一品の機能性を14の肌指標で数値化し、第三者によるブラインド試験を通じて中立的に評価。ユーザーの肌状態を可視化するツールとして、パーフェクト社のAI肌解析技術を採用し、その製品は今の自分の肌とどのくらい相性が良いかを提示します。
@cosme OSAKAでのイベントでは、実際に商品を手に取りながら、自分の肌と化粧品との「相性」を確認できる体験を提供し、1,700人の人たちが体験しました。
今回は、ミルーペの事業立ち上げの背景やAI肌解析を導入した経緯、@cosme OSAKAで得られた成果、そして今後の展望についてお話を伺いました。

中峯 良介
検察庁、法務省での勤務を経た後、民間企業で新規事業開発に携わる。 2025年6月に株式会社ミルーペを設立し、代表取締役に就任。 全層型人工皮膚モデルと遺伝子発現解析を用い、スキンケア製品の機能性を14項目で評価する「meLupe」を企画・開発。 第三者による中立的な評価とAI肌解析を組み合わせ、製品力が正当に伝わる市場の実現を目指している。

――まず、ミルーペ発足の背景について教えてください。
私たちが目指しているのは、スキンケア製品の「製品力」が正当に評価され、生活者が公平に商品を選べる市場をつくることです。
現在の化粧品市場では、生活者が「なんとなく良さそう」という感覚で商品を選ばざるを得ない場面が少なくありません。SNSや口コミ、ブランドイメージなども重要な情報ですが、それだけでは「自分にとって本当に合う製品なのか」を判断するのは難しいですよね。
一方で、メーカー側も製品力だけで競争できるとは限りません。
背景の一つにあるのが、化粧品における表現規制です。効能効果として表現できる範囲が限られているため、製品の特徴を言葉だけで十分に伝えることが難しい。その結果、広告やイメージによる競争に偏り、販促費への投資が増え、開発投資が細るという構造的な課題につながっています。
――確かに、日本の化粧品の広告では、曖昧な表現が多い印象があります。
そうですね。薬機法に抵触しないよう、どうしても曖昧でふんわりとした表現になりやすく、「実際にどのような効果が期待できるのか」「自分の肌に合うのか」といった点が、消費者には分かりにくいのが現状です。
一方で、韓国をはじめとする海外では、日本と比べて広告表現に関する規制が比較的緩やかな国もあります。そのため、広告だけを見ると「海外の化粧品のほうが、日本製品よりも効果が高いのではないか」と感じてしまうのも無理はありません。
実際、資料では、日本の化粧品輸出額は2021年の約7,906億円から2024年には約5,200億円まで減少し、約34%減となっています。また、2024年のクールジャパン関連11分野の中でも、化粧品だけが前年からマイナスとなっています。
だからこそ、製品の実力を「言葉」だけで伝えるのではなく、科学的なデータによって可視化する仕組みが必要だと考えました。
生活者向けのサービスにとどまらず、メーカーやリテール、OEM・ODMなど、化粧品業界に関わるさまざまな企業にも活用していただき、最終的には日本の化粧品産業全体の生産性向上につながるインフラを目指しています。

――具体的に、ミルーペではどのような取り組みをおこなっているのでしょうか?
私たちが何より重視しているのは、消費者に評価を信頼してもらえる仕組みをつくることです。そのために、「実測」「第三者」「中立」という3つの条件を徹底して守っています。
まず「実測」では、スキンケア製品を「全層型人工皮膚モデル」に実際に塗布し、その反応を解析しています。全層型人工皮膚モデルとは、簡単にいうと、人間の皮膚に近い構造を再現した人工的な皮膚モデルのことです。特徴的なのは、表皮だけではなく真皮まで再現した人工皮膚を使用していること。製品を直接塗布し、PCR検査などによって遺伝子発現を定量評価することで、成分表から効果を推定するのではなく、実際に製品を塗ったときの反応を測定しています。
そして2つ目が「第三者」です。評価の信頼性を高めるため、弊社自身が結果を操作できないよう、第三者機関によるブラインド試験で解析を行っています。
3つ目が「中立」です。評価結果やスコア、相性度、表示順位が金銭によって左右されることがないよう、メーカーからの支払いの有無や金額を評価に反映していません。
この「実測」「第三者」「中立」の3つの条件をしっかり守ることで、メーカーにも生活者にも信頼してもらえる、客観的な第三者評価を実現しています。

――そのようなしっかりとした製品の評価に加えて、なぜユーザー側の肌診断も必要だったのでしょうか?
最初は製品評価データを提供することを中心に考えていたんです。ただ、どれだけ詳細なデータを提供しても、生活者にとって「結局、自分にはどの商品が合うのか」が分からなければ、選択にはつながりません。
そこで、製品側にも定量的なデータがあり、ユーザー側にも肌状態を示す定量的なデータがあれば、その2つを組み合わせることで、「この人とこの製品はどのくらい相性が良いのか」を示せるのではないかと考えました。これが、現在のサービスの出発点です。
当初は専用の肌測定機器を導入する案もありましたが、機器を設置するとなると、導入コストや運用面での負担が大きくなります。そこで、「できればスマートフォンで完結できる仕組みにしたい」と考え、さまざまな肌診断サービスを調べました。その中で出会ったのが、御社のAI肌解析技術でした。

――数ある肌解析サービスの中から、弊社の技術を採用した決め手を教えてください。
肌解析を導入するにあたり、国内外を含めて3~4社ほどに話を聞き、価格だけでなく、精度や信頼性も含めて比較しました。ただ、私たち自身も最終的には「どの肌解析が正しいのか」を判断するのが難しかったんです。
その点、パーフェクト社はすでに大手企業での導入実績があり、信頼性があるという点で安心感がありました。また、実際に使ってみて特に印象に残ったのが、肌年齢の精度です。肌年齢は実年齢という基準があるため、結果の妥当性を判断しやすい。その点でも、パーフェクト社の技術は精度が高いと感じました。
実際に子どもで試してみた際にも、実年齢に近い肌年齢が出たり、肌状態についても非常に良い結果が出たりして、「なるほど」と納得しました。こうした分かりやすい実績と、実際に使って感じた精度の高さが、採用を決めるうえで大きかったですね。

――@cosme OSAKAでのイベント開催には、どのような目的があったのでしょうか?
当初は、BtoCのサービスとして、オンラインで直接ユーザーを獲得するモデルを想定していました。 動画やInstagramなどを活用してサービスへの登録を促していましたが、サービス自体への反応は想定以上に良かった一方で、有料ユーザーを継続的に獲得することには課題を感じていました。そこで次のステップとして考えたのが、リアル店舗での接点をつくることです。
「実際に商品を手に取りながら、自分の肌との相性を確かめられる体験を提供できないか」と考え、@cosme OSAKAでのイベント開催につながりました。
――イベントでの体験内容について教えてください。
店頭に並ぶ約30本の美容液を対象に、自分の肌との「相性度」を確認できる体験を提供しました。まずスマートフォンで無料の肌解析を行い、14の肌指標から自分の肌状態をチェックします。その後、気になる美容液のNFCタグやQRコードを読み取ると、その商品と自分の肌との相性度がパーセンテージで表示されます。
アプリをダウンロードする必要はなく、スマートフォンだけで約1分で体験できます。実際に商品を手に取りながら、自分の肌に合う商品を探していただける仕組みにしました。単に商品をランキング形式にするのではなく、「自分の場合はどうなのか」をその場で確認できるようにしたことがポイントです。
――商品との相性を数字で見られる一方で、「相性が一番高い商品を買えばいい」というサービスにはしていないのですね。
そこはかなり意識しましたね。 私たちが最初に懸念していたのは、「買い物の楽しさを奪ってしまうのではないか」ということでした。
例えば、「相性95%だから、この商品を買ってください」となってしまうと、数字の力が強いので、ユーザー自身が商品を選ぶ楽しさがなくなってしまいます。
私たちが目指しているのは、買い物を効率化することではなく、楽しみながら、納得して商品を選べるようにすることです。そのため、すべての商品を相性順に一覧表示するのではなく、ユーザー自身が気になる商品を一つずつ試していく形にしました。
そのおかげか、実際の店舗では、「楽しい」という声が多く聞かれました。商品を手に取って、自分の肌を診断して、商品にスマートフォンをかざす。すると、その場で相性がパーセンテージとして表示される。この一連の体験そのものが、従来の「診断→おすすめ商品」というレコメンドとは少し違った、新しい商品選びの体験になったと感じています。

――14日間のイベント期間中、どのくらいの方に体験いただいたのでしょうか?
約1,700名の方に体験いただきました。週末には1日平均183人が体験するなど、予想以上に多くの方に利用いただきましたね。体験者のうち20〜30代が68.4%、20代だけでも42.9%を占めています。
――実際に体験された方からは、どのような反応がありましたか?
イベント後にアンケートを実施したところ、興味深い結果が出ました。体験者1,698人のうち491人から回答があり、そのうち83.9%(412人)が、体験前後で「買いたい製品が変わった」または「買いたい製品が新たに見つかった」と回答しています。
さらに、43.6%は、体験前には購入する製品を決めていなかったものの、体験を通じて「買いたい製品が見つかった」と回答しました。単に購入候補が変わっただけでなく、新たな購買意向の創出にもつながったと考えています。
また、体験満足度は5点満点中4.42点、高評価率は85.9%でした。なかでも「相性度が参考になった」という項目は7点満点中6.23点と、今回の体験の中で最も高く評価されています。

――今回の体験を通じて、購買行動にも変化は見られましたか?
はい。今回の結果の中でも、特に注目しているポイントです。 分析したところ、相性度90%以上の商品は、それ以外の商品と比べて購入決定率が4.2倍となりました。
さらに、同じ商品であっても、相性度が高く表示された場合には、購入決定率が2.3倍になるという結果も出ています。販売面でも、相性度90%以上の商品は平均販売数が6.2倍となりました。
もちろん、今回の結果だけで購買行動のすべてを説明できるわけではありません。ただ、科学的な評価データを「自分の肌との相性」という形で提示することで、商品の選択や購入の後押しにつながる可能性は示せたと考えています。

――実際にユーザーに体験してもらったことで、数値以外でどのような発見がありましたか?
大きな発見の一つは、相性度の数値だけでは、購買行動をすべて説明できないということです。例えば、相性度がそれほど高くない商品でも、「普段から使っているから」という理由で購入する方がいました。一方で、相性度が高い商品だからといって、必ず購入につながるわけでもありません。
実際の購買では、口コミやSNS、ブランドへの好みなど、さまざまな情報を組み合わせて商品を選んでいます。つまり、相性度は購買を決める唯一の情報ではなく、商品を選ぶ際の新しい判断材料の一つとして機能しているのだと分かりました。
――メーカーにとっても、そうしたデータは重要な意味を持ちそうですね。
そうですね。例えば、相性度が65%だったユーザーが商品を購入している場合、「なぜその商品を選んだのか」を考えるきっかけになります。ブランドへの好意なのか、口コミの影響なのか、商品のコンセプトへの共感なのか。相性度だけでは捉えきれない、さまざまな購買理由が考えられます。
むしろメーカーにとっては、「なぜ買われなかったのか」だけでなく、「相性度がそれほど高くないのに、なぜ買ってくれたのか」を知ることにも価値があると思っています。今後は、こうしたデータを活用して、メーカーのマーケティング支援につなげていくことにも可能性を感じています。
――最終的には、どのようなポジションを目指しているのでしょうか。
私たちが目指しているのは、単なるスキンケアのレコメンデーションサービスではありません。第三者の立場から化粧品を評価し、その情報と一人ひとりの肌状態を組み合わせることで、「この製品が自分に合うのか」を納得して判断できる環境をつくりたいと考えています。
将来的には、化粧品における「第三者評価機関」のような存在を目指しています。その一方で、メーカーとの連携だけではなく、消費者との接点も持ち続けることが重要です。
メーカーから得た評価費用を、消費者への情報提供やサービスの充実に還元しながら、メーカーと消費者の双方に価値を提供できるプラットフォームへと発展させていきたいですね。
――最後に、AI肌解析を活用した今回の取り組みを通じて感じたことや、今後の展望を教えてください。
消費者が必要としているのは、必ずしも大量のデータではなく、「で、私にはどうなの?」という疑問に答えられる情報だと思っています。パーフェクト社のAI肌解析で一人ひとりの肌状態を数値化し、ミルーペ独自の製品評価データと組み合わせることで、「この製品が自分にとってどうなのか」を分かりやすく提示できるようになりました。
今後は、より多くの製品を評価し、自宅でも比較できるサービスなど、提供する機能やプランも広げていきたいと考えています。
目指しているのは、「良い製品を作ればきちんと売れる」環境をつくることです。消費者にも、単に人気だからという理由ではなく、自分の肌状態や製品の特徴を知ったうえで、納得して商品を選んでもらいたい。そのための新しいプラットフォームを、パーフェクト社のAI肌解析技術と掛け合わせてにつくっていきたいと思っています。
meLupe(ミルーペ)について詳しくはこちら
これまで日本の化粧品選びでは、広告や口コミ、周囲の評判など、感覚的な情報に頼らざるを得ない場面が多くありました。そうした中で、製品そのものの評価と、一人ひとりの肌との相性をデータで可視化するミルーペの取り組みは、化粧品選びに新たな視点をもたらすものだと感じます。
現在、日本の化粧品産業が「国家戦略産業」として位置づけられ、早急な広告規制の見直しなども求められる中、ミルーペのように製品の価値をデータで伝えるサービスが広がることで、日本の化粧品産業全体の競争力強化にもつながっていくのではないでしょうか。
パーフェクト株式会社では、AI肌解析やバーチャル試着などのテクノロジーを通じて、企業と生活者の新たな接点づくりを支援しています。今後も、データとAIを活用しながら、化粧品・美容業界における新たな顧客体験やサービスの創出をサポートしていきます。

パーフェクト株式会社は、日本、アメリカ、ヨーロッパ、台湾、中国、インドに拠点を構えています。 お客様のニーズや予算規模に合わせた柔軟なソリューションを提供しており、現在700以上のコスメ・ファッションブランドとパートナーシップを結び、10万点以上のコスメ商品を60か国以上で展開。 最先端のAR(拡張現実)およびAI(人工知能)技術を活用したサービスを、美容・ファッション業界のブランドや小売店に提供しています。