

『ドモホルンリンクル』を展開する株式会社再春館製薬所は、約50年にわたり、お客様一人ひとりに寄り添う対話を大切にしてきました。
しかし、Web化が進む中で「画面の向こうにいるお客様の状態が見えにくい」という新たな課題に直面したといいます。
その課題を解決するために導入されたのが、パーフェクト社のAI肌診断技術を活用した『素肌美チェック』です。
本記事では、長年培ってきた顧客対応と最先端テクノロジーをどのように融合させたのか。同社のデジタル体験設計の舞台裏について、担当者に話を伺いました。
これまで電話を通じて顧客と向き合ってきた再春館製薬所。しかし、Web化が進むにつれ「画面の向こうのお客様の肌状態が見えない」という、新たな課題が生まれたといいます。
――今回、AI肌解析ツール『素肌美チェック』を開発された背景について教えてください。
私たちのブランド『ドモホルンリンクル』の原点は、お客様一人ひとりと丁寧に向き合い、寄り添ったご提案を通じて感動をお届けすることにあります。しかし、お客様との接点が従来の電話中心からWebへと大きく移る中で、「お客様の状態が見えにくくなったこと」が新たな課題として浮かび上がってきました。
電話であれば、声のトーンや会話のニュアンスから、お肌の調子を細やかに感じ取ることができます。一方で、Webサイトを訪れるお客様の肌状態は画面越しには見えません。お客様への解像度が下がってしまったことは、私たちにとって非常に大きなマーケティング上の課題だったんです。
――その課題を解決するために取り組まれていた施策はあったのでしょうか?
アンケート形式等のコンテンツページを設けましたが、お客様にとっては入力の手間がかかる一方で、すべての方へすぐにフィードバックをお返しすることが困難でした。お客様にとっては「主観的な感覚をもとに答えるだけ」の体験になりやすく、客観性やメリットを両立したサービス提供に限界を感じておりました。
そこで必要だと考えたのが、Web(情報取得)と電話やWeb/チャット(深い相談)をつなぐ役割を持ち、お肌に興味を持つきっかけとなる「ワンクッションの接点」です。
客観的なデータをもとに瞬時に結果が出るAI肌診断は、お客様の「手軽に・正確に知りたい」というニーズと、私たちの「一人でも多く、客観的に理解したい」という課題を同時に解決する、まさに「Webと接客の間を埋める」存在でした。

再春館製薬所が目指したのは、自分の肌と向き合うきっかけをつくる体験。「客観的な気づき」と「思わず試したくなる楽しさ」の両立に挑んでいます。
――「肌診断」を導入するにあたり、どのような顧客体験(UX)を目指しましたか?
一言でいえば「ご自身の肌と向き合うきっかけづくり」です。客観的な悩みをAIでスコア化し、今の状態を可視化することで、「今、自分に何が必要か」を明確にします。
そこにAIならではの驚きや発見が加わることで、従来のアンケートにはなかったワクワク感を提供できると考えました。
――ターゲット層によって、役割も明確に使い分けているそうですね。
はい。新規のお客様に対しては、SNSや広告をきっかけに自分の肌状態を知っていただく「ブランドへの興味喚起(フック)」として活用しています。
一方で既存会員様には、日々のケアによる変化を確認し、モチベーションを維持するための「肌の成績表」としての役割を持たせています。
肌の状態が良いときは自信につながり、たとえ調子が良くないときでも「次はケアを頑張ろう」と前向きに捉えていただける。 スキンケアを続ける楽しさを可視化しながら、お客様に寄り添い続ける体験を目指しました。

市場には多くのAI肌診断ツールが存在しますが、同社が求めたのは「自社のこだわり」に寄り添える柔軟性だったといいます。
――弊社のAI肌診断を知ったきっかけと、導入の決め手を教えてください。
パーフェクト社の技術は、国内の大手ブランドをはじめ世界中で豊富な導入実績があり、その信頼性については以前から高く評価していました。そのうえで、比較検討を進める中で特に魅力に感じたのが、実績に加えた技術面での柔軟性です。
具体的には、当社が重視していた「新規のお客様」と「既存会員様」で体験を完全に分ける設計を、一つの仕組み(ウィジェットモード)で実現できる点に大きな可能性を感じました。
――「マルチモジュール」による実装ですね。
はい。精度の高さは前提として、複数のモジュールを自由に組み合わせられる柔軟性が大きな決め手となりました。お客様の属性やフェーズに応じてレコメンド内容を最適化でき、よりパーソナルなコミュニケーションが実現できています。
マルチモジュールによる実装は、国内初であるだけでなく、世界的にも先進的な取り組みだと伺っています。私たちのこだわりを形にするうえで、パーフェクト社の柔軟な技術基盤は欠かせない存在でした。

AI肌診断の導入は、単なる話題性にとどまらず、具体的なビジネス成果にもつながっているといいます。リリースから約1年で見えてきた数値の変化と、その背景にある運用の工夫について伺いました。
――運用を始めてからの反響はいかがですか?
まず購買面では、素肌美チェックを体験されたお客様の初回購入率が、未利用のお客様と比べて2倍以上という結果が出ています。
もともと関心の高いお客様が利用されている側面はありますが、診断をLINE上で完結できる設計にしたことで、その後のコミュニケーションにも自然につながっている点が大きいと感じています。
また、POPUPストアなどのオフラインイベントにおいても、LINEを通じてその場で手軽に体験できるため、ブランドとつながる最初の接点としての心理的ハードルを大きく下げることができています。
――具体的な売上や集客へのインパクトはいかがでしょうか。
売上面では、サービス開始の2024年11月から2026年1月までの累計で、数億円規模の売上貢献があったと試算しています。これはツール単体の効果にとどまらず、診断後のフォローコミュニケーションや接客との連携など、複合的な取り組みによる成果だと捉えています。
集客面においても、利用者数は導入直後にとどまらず継続的に伸びており、サービス開始当初の月間約4,500名から、2026年1月には14,257名と、3倍以上に増加しました。
特に既存会員様の利用が活発で、同月には8,842名と全体の6割以上を占めており、顧客エンゲージメントの向上に大きく寄与しています。
さらに、新規のお客様についても安定的に流入しており、2026年1月には4,638名の方が本サービスを通じて肌診断を体験しています。
――ここまでの結果につながった背景には、どのようなポイントがあったのでしょうか?
コンテンツそのものの魅力に加え、運用面での工夫が大きいと考えています。例えば、LINEの配信タイミングについては、「お客様が自分の肌と向き合いやすい時間帯」を検証し、週末の夜に配信するなどの調整を行いました。
お客様の生活リズムに寄り添い、「今なら試してみよう」と思える瞬間を捉える。そうしたデータに基づく運用の積み重ねが、利用拡大と成果創出につながっていると感じています。

比較にとらわれがちな肌診断の世界。再春館製薬所は、あえて他人と比べない独自の「おもてなし」体験を設計しているといいます。
――体験設計において、特に大切にされているこだわりを教えてください。
私たちが最も大切にしているのは、診断を「他人との競争」にしないことです。一方で、Web上のお客様にお肌への興味を持っていただく「きっかけ」として、同年代の平均スコアを一つの指標としてご案内することもあります。自分の立ち位置を客観的に知ることは、お肌に関心を持つための強力なフックになるからです。
実際、年代別の平均肌スコアを提示する施策は、新規のお客様が診断を始める大きな動機付けになっています。しかし、私たちの本質的な目的はそこではなく、あくまで「その方自身の本来の美しさ(理想の肌)をどう引き出すか」にあります。
――スコアの良し悪しよりも、「今の自分」の状態を知ることに重きを置いているのですね。
その通りです。一時的なスコアの上下に一喜一憂するのではなく、「前回の自分と比較してどう変わったか」「今の肌バランスを整えるために何が必要か」という、自分自身の変化に気づいていただくことに重きを置いています。
――もしスコアが下がってしまった場合、お客様へのフォローはどうされていますか?
実は、スコアが下がった時こそが私たちの出番です。診断結果に応じた最適なコミュニケーションを設計しており、そこから先はLINEを通じて、弊社の「お客様プリーザー(お客様窓口担当)」による有人応対へスムーズに繋がるよう意識しています。

単なる診断ツールで終わらせず、チャットや電話といった「人によるコアな応対」への距離を縮めるための入り口として機能させているんです。
――まさにデジタルの「おもてなし」ですね。
はい。単に「この商品を買ってください」というレコメンドではなく、今の悩みに寄り添った有益な情報を届ける。この姿勢こそが、私たちが長年電話で培ってきた「おもてなし」のデジタル化です。お客様に「押し売り」ではなく「寄り添い」を感じていただくことで、結果として納得感のある購買体験に繋がっています。

今回の取り組みで興味深いのが、LINEの位置づけ。あえてチャネルをLINEに絞り込んだ背景には、お客様の日常に最も溶け込み、かつ一人ひとりのライフサイクルを詳細に捉えるという、極めてロジカルな戦略がありました。
――LINEというプラットフォームを選ばれた、戦略的な狙いを教えてください。
LINEは「Web(情報取得)」と「接客(深い相談)」の中間を埋める存在だと定義しています。Webサイトほど受動的ではなく、電話ほどハードルが高くない。「ちょっと試したい」というカジュアルなニーズに、日常ツールであるLINEが最適だったんです。
――単に配信するだけでなく、技術的な工夫も凝らされているとお聞きしました。
はい。特にこだわったのが「導線」です。通常、キャンペーンはフォーム入力が障壁になりますが、今回はバナータップ後に即座にBOTを起動させ、直接診断へ誘引する仕組みを構築しました。この手間の排除が高い利用率に直結していると考えています。
――その体験を支える「データ活用」も非常に緻密ですね。
ここはこだわっていますね。
診断結果をLINE IDと連携させ、お客様を「未購入」「初回」「育成」「会員」「スリープ(休眠)」の5つのステージに細分化して管理しています。
御社の「マルチモジュール」機能を活用し、ステージごとにメッセージや推奨コンテンツをすべて出し分ける。お客様の状態に最適な「お声がけ」を自動でパーソナライズする。この徹底した設計が、高い購入率を支えるロジックになっています。

AI肌診断はあくまで「きっかけ」に過ぎません。その先に続く深い信頼関係を築くのは、やはり「人」の仕事。テクノロジーを極めるからこそ際立つ、再春館製薬所ならではの役割分担が垣間見えます。
――デジタル施策を強化する中で、強みである「人」の役割はどう変化しましたか?
AIは接点を広げるための入り口ですが、そこから先はお客様担当である「お客様プリーザー」が引き継ぎます。面白いことに、LINEで診断した結果を持って、すぐにお電話やLINEチャットで相談されるお客様は多くいらっしゃいます。
また、象徴的なのは、数年間お手入れから離れていた「スリープ(休眠)」のお客様の復帰ですね。AI肌診断をきっかけに、製品の購入を再検討される方がいらっしゃることは嬉しい効果です。
――AI肌診断が効果的な引き金になっているんですね。
ふとLINEで肌診断を試され、スコアの変化に気づいたお客様が「やっぱりちゃんとドモホルンリンクルでお手入れしなきゃ」と、3、4年ぶりに戻ってきてくださる事例も多々あります。
その際、私たちは過去の対話記録を大切にしています。今でも、電話でのやり取りではタブレット上に「手書きメモ」を残すなど、温度感のある管理を徹底しており、デジタルからアナログへのスムーズなバトンタッチを意識しています。

――デジタルを使いつつも、最後は「人の温もり」が待っていると。
そうです。LINEチャットでも、人が介在する場合は1分以内のレスポンスを目指しています。診断結果に基づき、お悩みに合わせたお手紙やノベルティを郵送することもあります。
AIで効率的に接点を広げ、最後は人が信頼を完成させる。このハイブリッドなあり方こそが、私たちが辿り着いた再春館らしい「デジタルおもてなし」の答えです。

継続意向や満足度を高めるために、視線はすでに「肌」のその先、お客様のライフスタイル全般へと向けられています。最後に、次なる展望について語っていただきました。
――今後の展望として、どのような構想をお持ちでしょうか。
まずは、肌診断機能やマイページをよりリッチなメディアへと進化させていきたいと考えています。現在はまだデザインやコンテンツの見せ方に改善の余地があると感じているので、御社のウィジェットの汎用性を活かし、より体験設計を重視した形にブラッシュアップしていく予定です。
――肌以外の領域への拡張も検討されていますか?
はい。私たちは「ポジティブエイジカンパニー」として、肌表面だけでなくお客様のライフスタイル全般に寄り添いたいと考えています。今後は、診断データからお客様の生活習慣の乱れや「変化のシグナル」を捉え、例えば睡眠不足の傾向がある方には睡眠の質を高めるアドバイスや商材をレコメンドするような、より深いライフサイクルに踏み込んだロジックを整えていきたいですね。
――AIという入り口から、お客様の人生にまで寄り添っていく。今後の進化も非常に楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました!
実際の「素肌美チェック」はこちらから体験できます。
※LINEがインストールされた端末をご利用ください。
今回の取材で最も印象的だったのは、再春館製薬所がAI肌診断を単なる「効率化」ではなく、創業以来の「対話」を深めるための手段と捉えている点です。
AI診断というデジタルな窓口を開きつつ、その先には人の温もりが控えている。テクノロジーが進化すればするほど、そこに込められた「人の想い」が価値を持つ。
再春館製薬所の取り組みは、これからのビューティーテックが目指すべきデジタルとアナログの理想的な調和を体現しているように感じました。

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