ポップアップは今、単なる期間限定の催しではなく、ブランドの価値や世界観を「体験」として伝える重要なマーケティング施策へと進化しています。
一方で、開催そのものが目的になってしまうと、期待した成果にはつながりません。体験設計、話題化の仕掛け、顧客獲得までをどのように組み立てるかが、成否を大きく左右します。
本記事では、業界や商材を問わず成果を上げているポップアップの成功事例10選を紹介しながら、効果を最大化するための設計ポイントを具体的に解説します。
ポップアップが注目される背景

街のいたる所で見かけるようになったポップアップですが、なぜ今、これほどまでに多くの企業がリアルな接点へと回帰しているのでしょうか。そこには消費者の意識変化と、これまでのマーケティング手法の限界が深く関わっています。
なぜ今、ポップアップが増えているのか
日本では、多くの消費者が日常的にECサイトを訪れ、商品を検索したり比較したりすることが当たり前になっています。一方で、その利便性が高まるほど、「実際の使用感を確かめたい」「手に取って試したい」「試着してから選びたい」といった、デジタルだけでは満たしきれないリアルな体験へのニーズも強まっています。
画面越しでは伝わらない質感やサイズ感、さらにはブランド独自の世界観に直接触れられるリアルな接点は、ECが普及するほど、その価値を高めているといえるでしょう。
さらに、SNSや動画プラットフォーム上にあふれる広告の存在も大きな要因の一つです。消費者は日々多くの広告に触れる中で、それらを意識的に回避する傾向を強めています。
こうした背景から、企業の一方的な情報発信だけでは消費者との接点を築くことが難しくなり、「消費者が自ら関わりたくなる体験」の設計が求められるようになりました。単なる購買や情報取得の場にとどまらず、わざわざ足を運ぶ理由や新たな発見を提供できるポップアップは、現代の消費者ニーズに適した施策といえるでしょう。
体験型のポップアップが流行している理由

近年のポップアップは、単に商品を並べて販売する「出張販売型」から、ブランドの世界観に没入させる「体験型」へと大きくシフトしています。
体験型ポップアップでは、商品情報や機能を文字で伝えるのではなく、来場者が実際に商品に触れ、プロのアドバイスを受けながら楽しむことで、商品やサービスを体験として理解できる点が特長です。視覚や聴覚、嗅覚といった五感を刺激するリアルな接点は、オンラインで得られる情報よりも印象に残りやすく、ブランドへの共感やエンゲージメントを高める効果があります。
さらに、これらの体験はSNSでの拡散を後押しする効果も。思わず誰かに共有したくなるようなフォトジェニックな空間、その場でしか得られない参加型のコンテンツは、来場者自身をメディア化させ、自然なクチコミを生み出します。
このように、リアルな体験を起点としてデジタル上の認知を拡大できる点こそが、体験型ポップアップが支持される最大の理由です。
ポップアップ実施で得られる5つの効果

ポップアップ施策は、単なる期間限定イベントにとどまらず、ブランド認知から顧客理解、データ活用までを一気に実現できるマーケティング手法です。
ここでは、ポップアップを実施することで得られる代表的な5つの効果について整理します。
SNS拡散とメディア露出による認知拡大
「期間限定」「初上陸」「新体験」といったキーワードはメディアが取り上げやすく、プレスリリースやSNSを通じて一気に認知を拡大できます。リアルな場での盛り上がりがデジタル上で拡散されることで、想定以上の広告効果を生むケースも珍しくありません。
体験を通じた理解促進・顧客のファン化
商品のこだわりやストーリーを企画内容や空間デザインなどに落とし込むことで、来場者に深く浸透させることができます。画面上の情報だけでは伝わりきらないブランドの「想い」に触れることで、単なる購入者から継続的なファンへと引き上げることが可能です。
新規顧客とのリアル接点を創出
普段ECを利用しない層や、たまたま通りかかった潜在顧客に対して、低いハードルでブランドに触れてもらう機会を作れます。実物を見る安心感を提供することで、これまでリーチできなかった層の心理的な障壁を取り除きます。
イベント後も継続的なアプローチが可能
来場をきっかけにアプリのダウンロードや公式LINEの友だち登録を促すことで、イベント終了後も継続的なアプローチが可能に。ポップアップを「出口(売場)」ではなく「入り口(接点)」と捉えることで、長期的なLTV(顧客生涯価値)向上に寄与します。
マーケティング戦略に直結
新商品の反応を発売前に確認したり、肌診断やアンケートを通じて顧客の生の声や特性データを収集したりする「実験の場」として機能します。ここで得られたリアルな定量・定性データは、その後の商品開発やマーケティング戦略に直結します。
ポップアップの成功事例10選
実際にどのような企画が成果を上げているのか、最新の成功事例を紹介します。
1. BULK HOMME(バルクオム)

メンズスキンケアブランド「BULK HOMME(バルクオム)」は、男性向けの肌診断イベント「男の肌戦闘力診断」をポップアップで開催。顔をかざすだけで肌状態をスコア化できる体験型コンテンツが注目を集め、多くの来場者が参加しました。ゲーム感覚で楽しめる診断により、男性の美容への興味を自然に引き出し、サンプル配布とあわせて商品の理解促進にも貢献。イベントの集客力向上とブランド体験の強化につながった事例です。
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2. ロート製薬

ロート製薬の「メンソレータム」は、「お肌のしんぱい自販機」と題したポップアップイベントを開催。会場には巨大な自販機を設置し、来場者が「くちびるの荒れ」や「手の乾燥」など、自身の肌悩みに合わせたボタンを押すと、最適な商品が入った限定ボックスが無料で受け取れる体験を提供しました。ブランドが掲げる「寄り添う姿勢」を遊び心のある装置で形にし、製品の理解と信頼を深める内容となっています。
3. ARC'TERYX(アークテリクス)

アウトドアブランドの「ARC'TERYX(アークテリクス)」は、ランドリースペースを併設したポップアップイベントを開催。GORE-TEXアパレル製品を対象に、正しいメンテナンス方法をレクチャーしながら洗濯・乾燥を体験できる場を提供しました。体験者には特別パッケージの洗濯洗剤をプレゼントし、製品価値と環境配慮への理解を深める内容となっています。
4. 株式会社創通メディカル(MYTREX)

株式会社創通メディカルが展開する「MYTREX(マイトレックス)」は、AI技術を活用したポップアップイベントを開催。会場ではAI肌診断機を設置し、来場者の肌悩みをその場で数値化。それに基づいた最適なスキンケアの提案や、最新機器の試用体験を提供しました。データに基づいたパーソナライズな体験を設計することで、高単価な製品に対する納得感と購買意欲を高め、購入へのハードルを下げる事例となっています。
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5. MASCODE(マスコード)

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000397.000012773.html
マスクブランドの「MASCODE(マスコード)」は、「優しさをシェアする」をテーマに、ギフト特化型のポップアップストアを開催。花屋のような店内で、購入したマスクに合わせ、好きな生花とメッセージカードを選んでオリジナルのギフトセットを作れる体験を提供しました。消耗品としてのマスクを、大切な人へ「ご自愛」を伝える特別な贈り物へと昇華させ、ブランドの情緒的価値を楽しみながら理解できる構成です。
6. プリングルズ

ポテトチップスブランドの「プリングルズ」は、新フレーバー「Hi! CHEESE!」を最高の状態で味わうための没入型レストランをポップアップ形式で開催。ASMRによる咀嚼音の体験や、独自開発の「チーズ砲」による香りの演出など、五感を順に刺激する仕掛けを通じて、最後の一枚を味わうまでの期待感を最大化させる構成となっています。単なる試食に留まらず、一連のエンターテインメント体験として提供することで、商品の濃厚な味わいを深く印象付ける内容となっています。
7. 花王株式会社

花王株式会社は「避暑地体験」をテーマに、体験型イベント「月祭 TSUKISAI」を開催しました。会場では「ビオレZero」によるさらさら肌体験や、貼る炭酸ジェルパックを使った冷感体験など、夏を快適に過ごすためのコンテンツを展開。さらに、独自開発のカメラで日やけ止めの塗りムラを可視化する診断ブースを設置し、最新技術による驚きと心地よさを同時に届けることで、ブランドへの信頼感と親近感を高めた事例です。
8. 再春館製薬所(ドモホルンリンクル)

再春館製薬所の「ドモホルンリンクル」は、全国初の長期展開ポップアップストアを開催。普段は通信販売を主軸とする同ブランドが、製品の原料や製造工程、独自の皮膚科学を五感で体験できる展示コーナーを設け、直接対話できる場を提供しました。会場では最新の肌診断や、熟練のスタッフによるスキンケアレクチャーを実施。半世紀にわたり積み上げてきたブランドの信頼と「生涯、寄り添う」姿勢をリアルに体感できる内容となっています。
9. 株式会社Rainbow Taste

株式会社Rainbow Tasteは、ご当地調味料ブランドの誕生を記念したポップアップイベントを開催。実際に販売している調味料の試食に加え、それらを使用したオリジナルフードを提供し、商品の魅力を体験的に伝えました。また、ブランドストーリーや世界観を紹介する展示コーナーも設置。単なる試食・販売にとどまらず、調味料の奥深さを体感しながら、地域の製造者を支援するというブランドの想いをリアルな場で伝える内容となっています。
10. 株式会社髪にドラマを(つるりんちょ)

ヘアケアメーカーの株式会社髪にドラマをは、「おうちケア」をコンセプトにした体験型ポップアップを開催。来場者特典のガチャガチャや、自分好みのルームフレグランスを作るワークショップ、さらには予約困難なプロの美容師によるヘアケア診断など、来場者に体験価値を提供するコンテンツを展開しました。予約制にすることで落ち着いた環境の中でじっくり体験できる設計となっており、ブランドへの理解や共感を深めた熱量の高いファンの獲得につながっています。
効果を最大化するポップアップの設計方法

成果を上げているポップアップには、感覚的な企画ではなく、明確な目的と一貫した設計思想があります。短期イベントだからこそ、「何を達成したいのか」「どの指標で成功を判断するのか」を事前に定め、体験設計から導線、効果測定までを戦略的に組み立てることが重要です。
KPIを明確にする(話題化/体験/獲得)
「なんとなく盛り上がった」で終わらせないためには、ポップアップの目的を明確にし、優先すべきKPIを定義する必要があります。目的によって設計や注力ポイントは大きく変わります。
- 話題化: SNSの投稿数、ハッシュタグリーチ数、メディア掲載数
- 体験: 来場者数、体験コンテンツ参加率、平均滞在時間
- 獲得: 商品売上、サンプル配布数、アプリDL数、LINE友だち追加数
「売る」より「体験させる」設計にする
ポップアップ会場での過度な販売訴求は、かえって体験価値を損ねてしまう場合があります。重要なのは、まずブランドへの理解や好意を醸成すること。商品を実際に使い、試し、納得してもらう体験を提供したうえで、購入は「後からECで」という選択肢を用意するのが、現代の消費行動に即した設計といえるでしょう。
SNS拡散を前提にした導線設計
体験を認知拡大につなげるためには、SNSでの拡散を前提とした設計が欠かせません。フォトジェニックな撮影スポットの設置に加え、投稿するとノベルティがもらえる仕組みや、ARフィルターなどを使った参加型コンテンツを用意することで、投稿のハードルを下げ、来場者の自発的な発信を促します。
オンラインとの連携を組み込む
ポップアップはイベント当日で完結させず、その後の関係性構築につなげることが重要です。会場内でのQRコード誘導や、来場者限定クーポンの配布、アプリや公式LINEへの登録導線を設けることで、リアルな熱量をデジタル上に引き継ぎ、継続的なコミュニケーションを可能にします。
成果を測定できる仕組みを用意する
施策の効果を正しく評価するためには、定量的なデータ取得が欠かせません。来場者の分析や、診断コンテンツを通じた顧客データの蓄積などを活用することで、属性や行動を可視化できます。感覚的な評価に頼らず次回施策に活かせるデータを残すことが、ポップアップを「単発イベント」から「戦略施策」へと進化させるポイントです。
ポップアップは「イベント」から「戦略」へ
ポップアップは今、単なる期間限定の販売イベントから、ブランドの未来を創る「戦略的な顧客との接点」へと進化しています。消費者が「わざわざ行く価値のある体験」を求めている現代において、ブランドの「体験設計」と「データ活用」をいかに融合させるかが成功の鍵です。
さらに、AIなどの最新テクノロジーを組み合わせることで、単発の盛り上がりで終わらせず、長期的なブランド戦略へと昇華させることが可能になります。 今回の事例を参考に、貴社のブランドらしさを「体験」として届ける、新たなマーケティングの形を検討してみてはいかがでしょうか。
パーフェクト株式会社について

パーフェクト株式会社は、日本、アメリカ、ヨーロッパ、台湾、中国、インドに拠点を置いています。 美容・スキンケア・エステ・医療業界を中心にAIを活用した肌診断サービスを提供しています。
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