

エスティ ローダーは、創業以来大切にしてきた「クオリティの高いタッチアップとサービス」を軸に、パーフェクト社のAI・AR技術を導入。
オンラインと店頭の両方で、これまでにないパーソナライズ体験を提供しています
本インタビューでは、ブランドの哲学からAI・AR導入の背景、活用事例や成果までを伺い、ラグジュアリーとテクノロジーが融合したエスティ ローダーならではの顧客体験の創出に迫りました。
――まず、ブランドについて教えてください。
エスティ ローダーは、1946年にミセス エスティ ローダーによって創設された、エスティ ローダー カンパニーズの旗艦ブランドです。創業当初から、女性一人ひとりのニーズに真摯に向き合い、スキンケアやメイクアップの分野で高品質な製品を届けています。 時代やライフスタイルが大きく変化するなかでも、私たちが大切にしている価値観は変わっていません。
現在は150以上の国と地域でブランドを展開し、店頭からオンラインまでさまざまな接点を通じて、世代を超えて共感いただけるメッセージを発信しています。
――顧客体験において、大切にしていることはありますか?
私たちが何より大切にしているのは、創業当初から続く「クオリティの高いタッチアップとサービス」です。この考え方は、最新のテクノロジーを取り入れる場合でも変わりません。 AIやARといった先端技術を活用したサービスであっても、実際の商品と同じレベルの精度や品質で体験していただくことを重視しています。
テクノロジーはあくまで手段であり、最終的にはお客様に安心して楽しんでいただける体験を届けることが重要だと考えています。
エスティ ローダーは、世界各国の店頭およびオンラインで利用している「iMatch™」に導入するテクノロジーとして、パーフェクト社のAI・AR技術を採用しました。
――弊社のAI・AR技術を選ばれた理由を教えてください。
AIとARを使ったバーチャルメイクは、自分の顔をそのまま画面に映しながら、実際の商品にかなり近い色味や質感を確認できるところがとても魅力的でした。百貨店の化粧品カウンターでも、スマートフォンやPCからブランドサイトを見ているときでも、鏡を見て試しているような感覚で、さまざまなカラーバリエーションを自分の顔で比べられます。
場所やデバイスが違っても、同じクオリティの体験をお届けできる点が、採用を決めた大きな理由ですね。
――現在、どのようなサービスを展開していますか?
店頭、オンライン、そして社内教育の3つの領域でサービスを展開しています。代表的なサービスは、リップのバーチャルメイク、AIスマートシェードファインダー、そして美容部員向けのARトレーニングです。

最初に導入したのは、リップのバーチャルメイクサービスです。数十色におよぶリップカラーをわずか数十秒で試すことができ、色味や質感、さらには複数のカラーの組み合わせまで、自分の顔で立体的に確認できます。先進的なテクノロジーを活用しながらも、ブランドの理念である「クオリティの高いタッチアップとサービス」をしっかりと体現しています。

次に店頭で導入したのが「AIスマートシェードファインダー」です。AIのディープラーニングを活用し、明暗やアンダートーンを含む約9万種類の肌色データを基に、顧客一人ひとりに最適なファンデーションの色味を瞬時に検出します。おすすめカラーの提案に加え、バーチャルシミュレーションによって仕上がりをその場で確認できる点も特長です。
現在では8,000台以上のデバイスに導入され、45か国以上の店頭カウンターで利用されているほか、オンラインでも同様の購買体験を提供しています。

現在、世界中に約1万7,000人の美容部員が在籍しており、その育成の一環として、新商品などに関するバーチャルトレーニングを行える「ARトレーニングサービス」を活用しています。エスティ ローダーは、高品質なタッチアップとパーソナライゼーションを強みとして、長年にわたり顧客体験の向上に取り組んできました。
今後はさらなるタッチアップ技術の向上を目指し、ARを積極的に取り入れることで、世界中で一貫した高品質な接客体験を提供できる体制を整えています。

――リップのバーチャルメイク導入によって、どのような変化がありましたか?
リップのバーチャルメイクは店頭でもオンラインでも売上に大きく貢献しています。特にオンラインでは、実際にバーチャルトライを体験していただくことで購入率が向上しました。現在は、世界中で8,000台以上のデバイスを活用し、接客の中でリップのバーチャルメイクを提供しています。
――効果は数字にも表れてますでしょうか?
はい。オンラインでは、バーチャルメイクを使ったお客様の購買率が、利用していないお客様と比べて2.5倍高いという結果が出ています。デジタルであっても、リアルに近い体験を提供できていることが、数字としてもはっきりと示されています。

――AIスマートシェードファインダーの導入で、どんな変化がありましたか?
従来は、ファンデーションを選ぶのに時間も手間もかかり、店頭で肌に合わせて慎重に試す必要がありました。しかし、「AIスマートシェードファインダー」を導入したことで、自分の顔で複数の色味を瞬時にシミュレーションできるようになり、選ぶプロセスがぐっと簡単になりました。これにより、ファンデーション選びそのものが、より楽しくスムーズな体験に変わっています。
――サービス設計において、特に意識されたポイントを教えてください。
私たちが重視したのは、一番合う色をただ一色提案するのではなく、お客様自身が「好きな色」「しっくりくる色」に出会える体験を作ることです。ARを使って自分の顔で試しながら、明るめ・暗め、赤み・青みなどニュアンスの異なる選択肢も表示することで、自然に自分らしい色を見つけられる環境を整えました。
さらに、AIによる分析に美容部員の専門知識を組み合わせることで、商品への理解も深まり、より納得感のある選択につながります。正解を押し付けるのではなく、選ぶプロセスそのものを支援することが、私たちの考えるパーソナライゼーションです。こうした体験の積み重ねが、購入率の向上だけでなく、長期的な顧客ロイヤリティの向上にもつながっています。

――社内教育におけるAR活用について教えてください。
現在、世界で1万7,000人以上の美容部員を対象に「ARライブトレーニング」を実施しています。2019年には年間を通して行われ、ライブ配信の累計視聴回数は約2万9,000回、アーカイブ動画も約1万9,000回再生されました。 移動や会場確保などの制約を受けず、精度の高いトレーニングをバーチャルで行えることが大きな特徴です。
トレーニング中は実際に商品をバーチャルで試しながら学べ、コメントや質問、リアクション機能を通じて双方向のコミュニケーションも生まれます。オンラインでありながら臨場感のある学びの場を実現しています。
――ARライブトレーニングを導入して、特に感じているメリットは何でしょうか?
年齢や経験に関係なく、誰もが同じ品質のトレーニングを受けられることです。遠隔でも、ブランドの核であるタッチアップを自分の顔で体感しながら学べます。タッチアップはエスティ ローダーのDNAそのもの。ARライブトレーニングによって、その価値を次の世代へ確実に継承できていると実感しています。
――オンラインと店頭を横断した購買体験で、特に意識されていることは何ですか?
私たちは、オンラインから店頭カウンターまで、どのタッチポイントにおいても一貫した購買体験を提供することを重視しています。オンラインとオフラインを切り分けるのではなく、常にお客様とのエンゲージメントを維持しつつ、シームレスにつながる体験設計が必要だと考えてきました。
――店頭での活用方法について教えてください。
店頭では美容部員が声をかけて体験を促すケースが多い一方で、操作が直感的なため、お客様ご自身が興味を持って自主的に試される場面も増えています。体験のハードルが低いことで、気軽に商品と向き合っていただける点が、エンゲージメント向上につながっていると感じています。
――オンラインでの利用状況にはどのような傾向がありますか?
オンラインでは、特に若い世代を中心に、スマートフォンから「バーチャルメイク」や「AIスマートシェードファインダー」を利用する傾向が見られます。こうした取り組みは、オンラインでの売上に貢献するだけでなく、実際に店頭へ足を運ぶきっかけづくりにもなっています。事前に情報やイメージを持った状態で来店いただくことで、店頭での体験価値も高まっていると感じています。
――最後に、今後の展望を教えてください。
私たちはテクノロジーを目的としてではなく、お客様の体験を高めるための手段として捉えています。創業以来大切にしてきた「クオリティの高いタッチアップとサービス」という価値観は、AIやARといった先端技術を取り入れた今も変わることなく、むしろその精度と体験価値をさらに高めています。
今後も、テクノロジーとラグジュアリーが融合した新しい顧客体験を追求し続け、常に進化を続けていきたいと考えています。