はじめに
この1年で世界は大きく変化しました。新型コロナウイルスの世界的な大流行によって、人々の働き方や自由な時間の過ごし方、買い物の習慣、さらには美容や化粧の習慣まで、あらゆる生活スタイルが変化しました。昨年、美容業界もデジタルトランスフォーメーションを経験しました。実店舗が閉鎖する代わりに、拡張現実(AR)と人工知能(AI)の技術が顧客に製品を仮想的に体験する機能を提供するツールとして台頭したのです。新しい美容技術は実店舗での試着に取って代わり、シームレスなオンラインショッピングを生み出しました。その結果、メイクのAR試着、AIによる肌診断、1対1美容アドバイザー、そして顧客一人一人に合わせた美容ショッピング体験が新しい標準になりました。
消費者は、美容ブランドや小売業者がすべてのチャネルでパーソナライズされた美容ショッピング体験を提供することを期待しており、これを実現するにはテクノロジーが不可欠です。世界的にワクチンが普及し経済制限は緩和されつつあるため、近い将来パンデミックは収束し、世界は正常な状態に戻ると予想されます。世界がパンデミック後の生活に適応し、人々が孤独から抜け出すにつれて、新しい美容トレンドと嗜好が顕著に表れています。
メソドロジー
美容ブランドは複雑に変化するビジネス環境、変化するトレンド、そして進化する消費者の要求に直面しています。美容ブランドの課題解決を支援するために、私たちはYouCamメイクのビッグデータを分析し、2021年のトレンドカラーとトレンドメイクを決定しました。YouCamアプリは世界中で9億回以上ダウンロードされています。 私たちは、2021年1月から6月までの6か月間に利用されたメイクの色と質感のデータを収集・分析しました。このレポートには、9つの主なマーケットである米国、英国、ブラジル、スペイン、ドイツ、フランス、日本、中国、そしてメキシコの消費者が好む色と質感に関する分析結果を示しています。
YouCamメイクのデータを利用することで、様々な地域の消費者がどの色と質感のリップやアイシャドウをAR試着しているか知ることができます。美容ブランドや小売業者は、このデータを利用することで、消費者の好みの変化に合わせて戦略を立てることができます。
世界のリップトレンドカラー
口紅の復活:国別のトレンドカラー分析
2020年には、世界各地でパンデミックによるマスク着用義務が実施されたため、口紅の人気は大幅に低下しました。しかし、今年は世界が徐々に正常に戻り、美容の定番が復活しつつあります。パンデミックへの楽観的な見方が強まり化粧をする機会が増えるにつれ、口紅を使用する人々は増えていくと予想されています。
YouCamメイクのAR試着データによると、世界で最も人気のある口紅の色は次の通りです。
自然な質感の台頭
パンデミックの間、多くの消費者は美容ルーチンを簡素化し、メイクよりもスキンケアとウェルネスに焦点を移しました。メイクする際は、マスクにつかない自然な色と質感が好まれました。この傾向は2021年も続いています。
2020年には、マットは世界で最も人気がある質感であり、従来のマットは引き続き最も人気のある質感の1つです。しかし、2021年には、米国、英国、中国、日本、スペイン、ドイツでシアーの人気がトップになりました。マットはフランスで最も人気のある質感で全体の44%を占めていますが、フランス市場でもシアーの試着が増加しており、2021年第1四半期から第2四半期の間で7%増加しました。
ラテンアメリカでは、マットがメキシコで全体の49%、ブラジルで41%を占めています。ブラジルでは、シアーが2021年第1四半期から第2四半期の間に8%増加しました。
メキシコでは、シアーが2021年第1四半期から第2四半期の間に9%増加しました。多くの消費者は、今後も自然な質感と微妙な輝きのあるリップに移りつつあるようです。以上のデータから、自然な美しさとメイクの人気が高まっていることが分かります。
リップグロスの人気が高まる
パンデミック時にマスクを着用すると、多くの製品、特にリップグロスは液体であるため、使用するのが困難になりました。消費者はリップグロスの代わりに、栄養価の高いリップクリームなど、メンテナンスの必要が少ないものを選択していました。今では、光沢のあるメイクの定番の人気が徐々に戻っています。消費者は文字通り、自分自身を輝かせたいと考えています。リップグロスは唇に輝きを与え、見た目を明るくすることで、そのような消費者の望みを叶えます。
弊社の調査によると、2021年第1四半期から第2四半期にかけて、リップグロスの試着はすべての市場で増加しました。リップグロスは日本で最も人気があり、全体の14.2%を占めています。次に中国(13.8%)、米国(13.4%)、英国(12.5%)、フランス(12.5%)が続きます。ドイツでは全体の10.6%を占め、ブラジル(9.3%)、スペイン(7.7%)、メキシコ(6.4%)が続きます。
トレンド:マルチベネフィット、保湿性の高いメイクアップ商品
2021年、消費者はマルチベネフィットのメイクアップ商品への関心を高めています。データによると、肌に潤いと栄養を与え、美容効果をもたらすメイクアップ商品に関心を持つ人が増えています。
世界で最も人気のあるリップメイクの1つであるシアーは、他の質感よりもオイル含有量が多いため、唇を一日中保湿することができます。唇に輝きと潤いを与えるリップグロスも、シアー同様すべての国で増加しています。さらに、多くのリップグロスはヒアルロン酸やビタミンEを含むため、スキンケアの観点からも利点があります。
CBIインサイトレポート「2021年 美容業界を変える14のトレンド*1」は、消費者が肌の健康とウェルネスをより意識するようになるにつれて、購買行動が変化することを報告しています。 “健康と美容の融合を反映する新たなトレンドの1つはメイクの「skinification」であり、従来の商品は美容だけでなく肌の健康も約束するべきである。” YouCam メイクの肌診断ツール利用回数が2021年上半期に2,700万回を超えたことから分かる通り、消費者の健康への関心は確実に高まっています。このAIを利用した肌診断ツールは、4つの特徴 (しみ、しわ、質感、目の下のクマ)に基づいて肌の状態を評価します。
さらに、グローバルコスメティックスニュース*2によると、消費者がウェブで保湿成分を検索する回数が、過去1年間で3桁増加したことが分かっています。これらの調査結果から、肌の健康への関心が急速に高まっていることは明らかです。
*1 https://www.cbinsights.com/research/report/beauty-trends-2021/
*2 https://www.globalcosmeticsnews.com/skincare-gets-savvy-do-increased-ingredient-google-searches-spell-a-new-future-for-the-consumer-market/
今回はリップについてご紹介しました。次回のブログでは、アイメイク、DXについてご紹介します。