2023年、ジュエリー業界ではコロナ禍で深刻な打撃を受けた会社が多く、現在は業績回復をしている企業と、苦戦している企業が混在しています。
この情勢の中、ジュエリー業界において、業績回復の手助けとなる施策の1つとしては、「ECと店舗の融合」が挙げられます。
本記事では、ジュエリー/宝飾業界はどのようにAI/ARを利用し、ECサイトと店舗を連携した相乗効果で、ビジネスメリットを得ることができるかについて解説します。
Table of Contents |
---|
ジュエリー業界における店舗販売の市場動向
ジュエリー業界は現在、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波に乗り、顧客との関係構築と商品販売においてデジタル技術を積極的に活用しています。
多くのブランドと小売店がオンラインプレゼンスを強化し、公式ウェブサイトやSNSを通じて商品を販売しています。
これにより、ジュエリー業界は顧客との緊密なコミュニケーションを確立し、新たな販売チャネルを開拓しています。
バーチャル試着の台頭
バーチャル試着技術の急速な台頭がジュエリー業界を変革しています。
この技術により、顧客はオンライン上でジュエリーをバーチャルに試着し、どのデザインが最も似合うかを確認できます。
バーチャル試着は、実際の試着に近い体験を提供し、購買決定をサポートしています。
AR技術は、ジュエリー業界における革新的な販売手法として浸透し、顧客が製品をより身近に感じる手助けをしています。
デジタルコミュニケーションの重要性
ジュエリー業界はデジタルコミュニケーションを重視しており、SNSプラットフォームを活用して新製品のプロモーションやブランドストーリーテリングを行っています。
これにより、ブランドは顧客との緊密なつながりを築き、信頼性を高めています。
ライブ動画販売の増加
ジュエリー業界で注目されているのは、ライブ動画を使用した販売の増加です。
このアプローチにより、ジュエリーの実際の製品をリアルタイムで見せることができ、顧客はライブで試着体験をすることができます。
これはリアルなショッピング体験を提供し、購買意欲を高めています。
店舗だけでなく、ECへの対応が鍵
コロナ禍が収束し、ジュエリー業界における需要が回復してくる段階においては、公式ウェブサイトやECへの対応が売上の向上に役立つかもしれません。なぜなら、長期のコロナ禍により、人々は在宅で買い物をすることに慣れすぎてしまったと思われるからです。
EC化率が低かったファッション業界でも、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、2015年の9%から、2020年の19.44%にまで増えたというデータがあります。
ジュエリー業界のDX:店舗とECの融合
ジュエリー業界が、DX推進を実現しつつ、今後増えてくるオンライン販売、EC ネットショップへ最適化対応していくために、AI/AR技術の活用が注目されています。
AI/ARとは何か、既にご存じな方も多いかと思いますが、まず簡単に説明致します。
ジュエリー業界におけるAI/AR技術の応用
AIとは人工知能(artificial intelligence)の略称です。
わかりやすく言えば、人間ができる認識や分析などをコンピュータ上で実現する技術のことで、ファッション業界やジュエリー業界と相性が良いと言えるでしょう。
例えば AI ディープラーニングの活用により、以下のようなことが実現できるようになります。
- リアルタイムで顔のパーツ、頭、首の特徴を認識でき、最適な商品をユーザー1人1人にレコメンドする
- 異なる肌色や大きさの手のひら、手の甲、爪が認識できる
- 手や顔の動きが瞬時にトラッキングできる
これらは人間にとっては当たり前のことですが、実は非常に高度な情報処理技術であり、近年になるまでコンピュータでは実現できませんでした。
このようなことができるプログラムをAIと言います。
一方、ARとは拡張現実(Augmented Reality)の略称です。
拡張現実とは現実の空間にバーチャルな情報を重ね合わせる技術を言います。
AI と併用した活用が多く、例えば以下のようなことです。
- カメラを起動すると、バッグや靴がその場所に合わせたサイズで表示される
- 自撮りカメラで、自分の顔、首、手あるいは体で、バーチャルで商品を試着することができる
- 現実の商品をカメラに映し、その商品についての情報(金額、型番など)が表示される
2D画像から3Dモデルの生成
2D画像から3Dモデルへの変換は、バーチャル試着の導入において複雑なプロセスとなりますが、パーフェクト社はこの課題に立ち向かい、画期的な技術を開発しました。
当社の独自のアプローチは、2D画像の提供だけで、指輪、ブレスレット、ネックレスなどのアクセサリーを3DのAR試着に変換することができるという点です。
この技術により、複雑な3Dモデルの生成プロセスが簡略化され、ユーザーに対して直感的で臨場感ある試着エクスペリエンスを提供します。
さらに、パーフェクト社の技術は微細なディテールとデザインを精緻に再現し、製品のディテールやデザインの忠実度を向上させています。
このおかげで、ユーザーはバーチャル試着を通じて、アクセサリーが実際に身につけた際にどのように映え、適合するかをリアルに確認できます。
パーフェクト社の2D画像から3Dモデルへの変換技術は、アクセサリー業界に新たな次元をもたらし、顧客により豊かで満足度の高いショッピングエクスペリエンスを提供します。
なぜAI/ARがジュエリービジネスに役立つか?
ジュエリー業界でAI/ARの活用が重要な理由は、ECと店舗の融合に役立つからです。
順を追って説明します。
まず、AIとARの技術を組み合わせれば、「商品試着」や「商品レコメンド」の機能をEC上に搭載できます。
魅力的な機能ですが、最近になりやっとブランドサイト等に実装されるようになってきた機能です。
なぜ最近になるまで導入されなかったかの理由として、一つは「店頭のショッピング体験のほうが楽しい」からです。
日本の消費者は、アメリカや中国に比べたら、比較的に店舗までの距離が近く、または交通の利便性が高いと考えられます。
小売業のブランド力も強い日本では、店頭のサービスが良く、「消費者に楽しい店頭ショッピング体験を与えたい」というコンセプトのもと、仕組み作りを行っています。
コロナ禍までは、ほとんどのラグジュアリーブランド、ジュエリー、アクセサリーや衣服の消費者は、オンラインで購入すること自体、考えてもいませんでした。
もう一つは、「人の心を動かすテクノロジーがなかった」と考えられるでしょう。
スマートフォン及び通話アプリの普及につれ、オンラインでキラキラなカチューシャ、大げさのかわいいアクセサリーなど、フィルターという形で画像や動画で楽しめるようになっています。
しかし、ギミック感が強く、あくまでも「遊びのコンテンツ」と認識され、リアルさは求められず、実際の商品販促に使える技術という認識が薄かったのです。
しかし、この数年、映画や3Dアニメ制作に使用される、実物のようなリアルさを追求する技術は、一般消費者向けにも応用できるようになりました。例えば、PBR(Physical Based Rendering)と呼ばれる技術で、物理的な光の反射をモデル化することでリアルな質感を表現できるのです。
宝飾品のダイヤモンドやパールをあしらったブレスレットやネックレスが忠実にバーチャルで再現され、その試着を楽しむことができるようになります。
この技術を活用すれば、顧客はデジタル上でもリアルに限りなく近い楽しいショッピング体験ができ、ブランドのイメージ向上に繋がると思われます。
消費者行動の変化と技術の進化で、店舗とECの融合を実現
ジュエリーブランドやアパレルブランドにとって、従来のECサイトは試着ができなかったため、あくまでもリアルの店舗に行けないときの代替手段であり、リアルの店舗よりも有意義なショッピング体験を得られないというのが通説でした。
自宅でECサイトを使って買うよりも、路面店やデパートなどに出向いて店舗で購入する方がずっと楽しい体験だったのです。
AIやARをつかったショッピング体験は、実店舗に敵わない点もありますが、異なる角度から顧客に「楽しい体験」を提供することができるようになります。
EC上でリアルな3D映像をユーザーの体に合成して、まるで現実と同じような試着。
今まで手が届かなかったような高級なジュエリーも、オンラインでは店舗スタッフの目を気にせずに、飽きるまで試しに付けてみることができます。
これは店舗にも無く、なかなか実現できなかった顧客体験です。
AIとARによって、店舗にも引けを取らない体験価値をECがもたらすようになるのです。
また、EC上で様々な行動データが蓄積できるため、実店舗に加えて、ECなどオンラインのデジタル履歴も統合した上、顧客体験を最適化、ブランドのロイヤリティ向上と定着を実現させることができ、ブランディングの一環にもなります。
本当のECと店舗の融合は、ここからではないでしょうか。
AIやARでECの顧客体験価値を高めると、顧客の来店を誘引できる?
AIやARを使ってECでジュエリーを試着すると、店舗に行ってリアルでも試着したくなると思われます。
実際に私たちも、最終的には店頭で試して購入判断に至ることが多いではないでしょうか?
オンラインでバーチャル試着を繰り返し、ある程度自分の気になるアイテムを見定めて店頭でも試して最終確認したりします。
中には店頭で決めて最後の購入はオンラインで発注することを好む消費者もいらっしゃいます。
オンラインでもオフラインでも一貫した試着体験を提供することで、ECでの売上にも貢献する機会を創出し、相乗効果によって店舗での売上に繋がるチャンスも増えると考えられるのです。
これがAIとARを活用したバーチャル試着がジュエリー業界で実際に役に立ち、必要不可欠な要因となっていく理由です。
競争が激しい宝飾品業界の中、今後はいち早くAI&ARを駆使し、ECと店舗の連携させ、OMO施策にとり組む企業が、ブランドの価値を高くしていくと思われます。
ジュエリー業界EC試着のグローバル事例
日本
日本もアクセサリー、腕時計から靴まで、AR試着できる商品が増えています。
期間限定のテスト施策でも、ECのお買い物体験の一環として長期的に提供する企業もあります。
ジュエリー及びファッション業界では、この数年間に様々な商品のバーチャル試着が増え、多くの人の目に触れて、サービスの技術開発がどんどん進めています。
2019年、大手腕時計「シチズン」は「マーカー方式」を採用し、店頭でもらったARリストバンドを付けたら、自宅でも腕時計を試着できます。
2020年から、耳まわりアクセサリー専門店「mimi33」が「ARイヤリング」の提供を始めました。
2021年に、ファッションECサイト「ZOZOSHOES」が約10日間の期間限定で「AR靴試着」を提供しました。
AR試着をチャレンジしてみるブランドは、今年に入っても続々登場しています。
日本発のラグジュアリージュエラー「TASAKI」は、dangerシリーズでの「AR指輪」試着の提供を始めました。
シチズンの腕時計との相違点は「マーカー不要」という点です。
最新のAI/AR技術で、お客様がご自身のスマホカメラを起動すれば、簡単にAR試着できて、自宅にいても、身に纏うイメージがわかりやすくなります。
同シリーズは人気漫画『チェーンソーマン』とのスペシャルコラボもあり、ラグジュアリージュエラーとして、様々な楽しい取り組みを行い、消費者に「楽しいショッピング体験」を提供しています。
イギリス
たくさんのセレブに愛用されている、イギリスの高級ファッションブランド「Alexander McQueen」は、2022年夏から「ARイヤリング」の試着を始めました。
インド
世界第5位の時計メーカーかつインド大手のファッション企業 Titan Company の傘下にある「CaratLane」は、指輪やブレスレット、ネックレス、ペンダントなど、幅広い商品のオンラインAR試着が対応できます。約130軒の店舗を持つ同社は、まさにARバーチャル試着でOMO施策を強化している企業の一つです。
韓国
韓国発の「LOLOGEN」は、独自の顔認識技術を生かし、アイウェアや帽子などのソリューションを提供しています。2020年までは日本市場向けのコンテンツがよく見かけていましたが、最近は英語と韓国語を中心に発信しています。
OMO戦略(ECと店舗の融合)における展開
常にECのUI・UXを意識
このような「AR試着」は、ただ導入して完了するものではありません。
以前弊社主催のセミナー「【AIとARで販売促進】エンゲージメント創出とUX最適化により確実に売上に貢献する方法を大公開!」でお話しさせていただきましたが、どのように顧客の行動データを収集し、UXを最適化させて売上アップに繋げるかが重要となります。
そのため、ECサイト上のUI(ユーザー インターフェース)・UX(ユーザー エクスペリエンス)を意識して運用、アップデートし続けるのがとても大事です。
導入前後の注意点もセミナー中でご解説していますので、ぜひ併せてご視聴ください。
ジュエリーEC x 店舗の相乗効果
ECと店舗の相乗効果を最大限するために、EC上では完全なシームレス、ストレスフリーの体験が求められています。
サイト上で分かりやすい「イヤリングを試着する」「リングを試着する」というボタンを押すだけで、モジュールが起動されます。
このようにユーザーにとって、探す手間がかからず、かつシームレスであることがオンラインショッピングをする上で非常に大事です。
アプリをダウンロードしたり、ログインするなどの手間を挟んだりするとユーザーは大半が離脱してしまいがちです。
店舗における接客にはどう活用するでしょう。
人々の生活習慣をすっかり変えてしまったコロナ禍。
店舗への来訪の際に、衛生面を気になるお客様が少なくないでしょう。
コロナ禍がまだ完全に収束しない限り、ジュエリーを何個も試着したり、販売スタッフと接触したりするのに抵抗を覚える顧客も多いかもしれません。
そのようなときにAI/ARのバーチャル試着は役立ちます。
試着はしたいが接触は嫌だという顧客のために店舗内にスマートフォン、iPadやQRコードを設置し、どこからでもアクセス可能なバーチャル試着により、ショッピングを楽しんでもらう展開方法が考えられます。
また、顧客管理の面から、店舗で「AR試着」された商品情報は会員情報と紐付ければ、デジタル保存が容易になります。
消費者の好み及び行動を可視化されたら、顧客への理解がより深まるでしょう。
まとめ:今後のジュエリー業界ではAI/ARの活用が鍵
ジュエリー業界の需要回復はまだ道半ばですが、将来的にAI/ARに投資した企業と投資しなかった企業では明暗が分かれると予想しています。
そのような中、今こそ自社ジュエリーブランドの公式サイト、ECサイトへAI/AR試着モジュール導入のメリット・デメリットを一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
お困りごとございましたら、是非一度ご相談ください。
大手化粧品メーカーの導入立ち上げ経験が豊富なスタッフがサポートします。