ZOZOTOWNといえば巨大な顧客エンゲージメントを生み出しているファッションECですが、どのようにそれを生み出しているのでしょうか?
パーフェクト社が開催したビジネスウェビナー「ZOZOTOWNのARメイク機能を使った戦略」では、ZOZOTOWN上のコスメ専門モール「ZOZOCOSME」で新たにサービスを開始したAR技術活用とその反響について株式会社ZOZOの諸星一行氏が語っています。
本記事では動画の内容の紹介と、AR技術を用いたEC戦略について解説します。
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ZOZOに導入されたARメイク
最近のZOZOTOWNの業績を牽引しているジャンルの1つに「コスメ」があります。
ZOZOといえばアパレル中心のECでしたが、2021年3月にZOZOCOSMEをオープンし、コスメ市場に本格参入しました。
そのZOZOCOSMEの成長に大きく寄与したのが、AR技術を活用したARメイクでした。
ARメイク体験機能を「ZOZOTOWN」アプリに提供、ECアプリとしては国内初導入
ARメイクとは?
ARメイクとはAIおよびAR技術を利用して、ZOZOTOWNアプリ上でメイクのお試し体験ができる機能です。
スマホのカメラを使って顧客の顔を写し、ZOZOCOSMEの商品をバーチャルで体験できます。
従来はコスメのお試しは店舗にて美容部員や化粧品販売員から接客を受けながら行うケースが多かったと思います。
また、Z世代に代表される若年層はドラッグストアなどで買える低価格化粧品の需要が強いです。
したがって、コスメ市場におけるECの需要はそこまで高くありませんでした。
しかし、コロナ禍などの環境の変化もあり、ECサイトの利用率も高まってきています。
そのような中でZOZOがZOZOCOSMEに導入したのはパーフェクト社のバーチャルメイクモジュールでした。
ARとは何か
ARとはAugmented Realityの略称で日本語では「拡張現実」と呼びます。
その名の通り、現実の世界にバーチャルな世界を重ね合わせて拡張する技術です。
完全なバーチャル世界と異なるのはあくまでも現実の拡張である点です。
つまり、現実の風景の中に、現実にはない情報を重ね合わせる技術になります。
ARの例としては以下のような技術があります。
- 現実の顔の上にバーチャルなメイクを重ね合わせる(コスメEC)
- 現実世界と同期されたゲーム内の世界でモンスターを捕まえる(位置情報ゲーム)
- 自宅の部屋の風景の中にバーチャルな家具を置いて雰囲気を試す(家具EC)
※関連記事:デジタルコミュニケーションによる化粧品業界の変革
コスメECモールにバーチャルメイクを導入する意味
コスメECモールにバーチャルメイクを搭載すると顧客体験価値が高まると考えられます。
従来のECではお試しができないため、店舗と比較してECの体験価値は低く、いつも使っている商品を追加で購入する用途で利用する場合が多かったのです。
しかし、そこにバーチャルメイクモジュールを搭載することにより、顧客は誰にも気兼ねなく商品を試せるという店舗には無い体験を生み出しました。
これは今までのECにも店舗にも無かった体験価値です。
また、ZOZOは100%ECのみですが、もしECと店舗の両方が存在する企業であれば、バーチャルメイク体験は顧客が店舗へ訪問したくなる効果ももたらします。
もちろんバーチャルメイクによって顧客体験価値が上がればECでのCVも増えると思われますが、それと同時に「店舗に行って詳しく相談したい」という欲求も喚起されるのです。
さらに、このARによるバーチャルメイクはECだけのものではなく、店舗においても活用が可能です。
コロナ禍以降、ソーシャルディスタンスの概念が生まれ、できるだけ接触しない接客が求められています。
店舗においても汎用的なタブレット端末などから自社ECにアクセスし、バーチャルメイクを使いながらの接客によって顧客体験価値の向上が期待できます。
AR技術を使ったバーチャルメイクを導入すれば、ECから店舗に至るまでの全てのステップにて顧客体験価値の底上げが期待できるのです。
ZOZOが新しく挑戦する「ZOZOCOSME」
ZOZOは2021年3月にコスメ市場に本格参入し、コスメ専門モール「ZOZOCOSME」をオープンしました。
このモールは、コスメの新しい購入体験を実現するために現在国内外600以上のブランドを厳選し、豊富なラインナップを取りそろえています。
そのZOZOCOSMEにおいて新たな顧客体験価値を創出しているのがARメイク(バーチャルメイク)です。
ZOZOCOSMEはオープン後から一貫して右肩上がりに新規購入者数が伸びています。
Z世代のコスメ需要がモールの業績を牽引
従来のZOZOTOWNはアパレル中心のECでしたが、ZOZOCOSMEの展開により特にZ世代と呼ばれる若い世代へリーチできているそうです。
Z世代とは1990年代中盤から2000年代にかけて生まれた世代で、2022年現在は12歳〜27歳前後の世代を言います。
この世代はいわゆるデジタルネイティブ世代で、物心がついたときからパソコンや携帯電話、スマートフォンなどが身の回りにあり、SaaSやサブスク、SNSなどのデジタルサービスを当たり前のように使いこなしている世代です。
この世代は普段使う日用品のデジタル購入に違和感を覚えにくいと考えられます。
また、バーチャルメイクは技術の方向性としては彼らが普段使っているスマートフォンの画像加工アプリと似ているため、バーチャルメイクを使ったコスメのお試しの価値をすぐに受け入れられたのでしょう。
ZOZOCOSMEの業績は商品取扱高57億円にまで拡大
上記のようなZ世代への浸透もあり、ZOZOCOSMEは2021年度の実績として商品取扱高57億円にまで拡大しました。
今後はギフトやメンズ領域も強化し、商品取扱高100億円の大台を目指しています。
ECモールの未来
ECモールへのAR技術の導入は最近注目されているWeb3.0とも関わりがあります。
Web3.0におけるECは今よりももっと発展したAR技術を用いると予想されるからです。
メタバースとECとの親和性
一時期注目されたメタバースはECとの親和性が指摘されています。
メタバースとは3DのCGで構築されたバーチャル空間です。
このようなサービスは従来ゲーム分野などにすでに存在しました。
しかし、メタバースがゲームと異なるのは現実との同期性です。
つまりメタバースは巨大な拡張現実であり、あくまでも現実空間の延長なのです。
例えば、メタバースの中にバーチャルで巨大なショッピングモールが存在し、顧客は自分の現実の容姿にそっくりに作られたアバターを使ってそこで買い物ができる。
そして後日、同じ商品が現実の自宅に届く、といったビジネスモデルが考えられます。
※関連記事:メタバースにおけるAR技術の活用
詳細は動画で
ここまでの議論は全て動画内で詳しく解説されています。
ZOZOCOSMEにおけるARメイク体験機能の開発背景、UXの最適化、機能に対する期待値、反響や今後の展望について興味のある方はぜひ動画をご覧ください。
EC、小売業界におけるビューティー・ファッションテックの活用について
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